対決

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そう言った蕗は、薬剤室に行き、大きなリュックに、沢山の回復薬を入れ いつもの如雨露も持って、またカルルの背中に乗った。 「ふ、蕗様?」「何をなさるのです?」皆が、声を上げる中 「黒いドラゴンと、グラディスの様子を見て来るわ、怪我をした筈だから」と もう、テラスを離れながら言う「な、何とっ」「グラディスの所へ?」 「いけません、お帰り下さいっ」皆は、口々に叫んだが、もうカルルは 花畑を超えて、白い国へと向かっていた。 「行ってしまわれた、、」「大丈夫でしょうか?」皆は、不安な顔で言う。 「心配だが、我々には、白の国へ行く手立てが無い みんな、蕗様の無事を祈ろう」ハルドがそう言い 皆は、その場に膝まづき、手を組むと、神に蕗とカルルの無事を祈った。 その頃、蕗とカルルは、黒いドラゴンと、グラディスが居る場所へ降り立った 黒いドラゴンは、カルルを恐れて、隅っこに、大きな体を縮めていた。 グラディスは、傍の椅子に座ったまま、苦しそうな息をしていた。 「な、何を、、しに来た」グラディスが、弱々しい声で言う。 「怪我の治療よ」「ば、ば、かな、、」グラディスは 信じられ無いと言う顔で、言う。 「だって、私は、癒しの魔導士だもの、怪我をした者には、治療をするの」 そう言うと、黒いドラゴンの傍へ行き「今、治してあげるからね」と 優しく言うと、回復薬を如雨露に入れて、火傷をしている部分に掛けた。 火傷は、たちまち治って行く「ドラゴンだけ有って、治りが早いわね」 すっかり、火傷が無くなった黒いドラゴンは、嬉しそうに羽ばたいた。 「さて、次は貴方ね」蕗が、グラディスにそう言うと 「癒しの魔導士なら、わしの命が、もうわずかだと言う事は 分かっているだろう」と、グラディスが言う。 「分かってるわ、でも、痛みだけでも、取りたいと リフの花を取りに来たんでしょ」そう言いながら グラディスに、回復薬を飲ませる。 「見破られていたか、だが、わしの力では、回復薬は作れぬ、それでも 花を食べれば、何とかならないかと、思ったのだ」 回復薬が聞いて、痛みが無くなったのか、グラディスは、そう言った。 その時、高い崖の上の、洞窟から出て来た、赤いドラゴンが、下を見て 「カカカ、カルル~」と、鳴いた、カルルと蕗が、その声の方を見上げる。 「あっ、カルル、お前の、お母さんだよ」蕗がそう言った。 「やはり、この子は、あのドラゴンの子供なんだな」 グラディスが、言う「多分、そうだと思うわ」そう言った蕗は 「あの子は、飛べないんでしょ」と、聞く「ああ、羽を折っているんだ」 「よし、カルル、あそこまで飛んで」蕗は、カルルに乗って 赤いドラゴンの、傍まで行った、赤いドラゴンは、カルルの傍に来て 「ル、ル、ル~」と、顔を擦り付ける。 自分の子供だと、分かったのだろうか?だが、カルルは、きょとんとして 蕗の後ろに体を置き、そっと、伺う様に赤いドラゴンを見る。 赤いドラゴンは、悲しそうな顔になった。 「さぁ、羽を見せて、どこが折れているのかな」蕗はそう言うと 赤いドラゴンの羽を、丁寧に診て、折れている所を見つけ 「治れ、治れ」と、祈る、たちまち骨はくっついた。 「さぁ、もう大丈夫よ、羽ばたいてごらん」蕗がそう言うと 赤いドラゴンは、大きく羽ばたき、ふわりと空に飛ぶと グラディスと黒いドラゴンの所へ、降りて行った。
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