対決

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蕗とカルルも、その後に続く。 赤いドラゴンは、グラディスの膝に、顔を近づけた。 「お前も治して貰ったのか、良かったな~」その鼻先を、撫でながら グラディスが言う、薬が効いて少し楽になったのか、グラディスは 自分の生い立ちから、話し始めた。 「わしは、スコットランドの北に有る国、ノーランドの国王の 世継ぎの王子として生まれたのだ」 だが、内乱が起こり、国王は闇討ちされ、新しい国王になろうとしたのは 国王の弟だった、だが国民は、非情な、その弟を国王として認めなかった。 弟のギリアンは、仕方なく兄の妻だった王妃と結婚し、女王として立て 自分は、影から国政を操作すると言う、形式を取った。 そんな無茶な事に、王妃が従ったのは、王子であるグラディスを 人質として、ギリアンに捕えられていたからだ。 その時、グラディスは、まだ8歳だったが、一年の半分は雪と氷に閉ざされる 北の果ての屋敷に、幽閉されていた。 身の回りの世話をする、執事が二人、屋敷を警護する五人、たった八人だけの 何も無い毎日だった、する事も無かったグラディスは、その屋敷内に 唯一あった書庫で、一日中、本を読んで暮らした。 年に一度、画家が来て、グラディスの姿を描いて帰り、女王に献上する。 グラディスの母は、少しずつ成長していく、我が子の絵を抱きしめて、泣いた グラディスが、12歳になった、ある夜、眠れなくて、テラスに出ていると 隣りの部屋で、警護の者が三人、酒を飲んで喋っているのが聞こえた。 その話の内容で、なぜ自分が、ここに幽閉されているのか 優しかった父の死や、愛する母と何故会えないのか等を 全部知ってしまった。 グラディスは、叔父ギリアンに、激しい憎悪の炎を燃やしたが 何の力も無い自分には、どうする事もできなかった。 何か力を、、そう思ったグラディスは、書庫の一番奥で見つけていた 【禁断の書】と書かれた、箱を開けた。 中には、魔法が使える方法を書いた本が有った。 グラディスは、それを読破し、密かに魔法を使う練習をした。 だが、思った様に魔法は使えなかった。 それでも諦めず、来る日も来る日も、魔法を使う練習をした。 ある夏の日、許されている、僅かな林の中への散歩に出かけていた時 突然、狼に襲われた、死ぬかも知れない、その恐怖で思わず放った魔法は 一撃で、狼を倒した。 これだっ、コツを掴んだグラディスは 徐々に、大きな魔法が使える様に、なって行った。 その魔法は、恐怖や憎悪等の、負の感情を固めた、黒い魔法だった。
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