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だが、強くなった魔法も、上手く行く時と、行かない時の差が激しかった。
力が、安定しないのだ「これでは、まだ叔父と対決は出来ない」
グラディスは、魔法を強くするため、更に叔父に対する憎悪を燃やした。
その憎悪の材料は、毎年やって来る、画家の世間話と
母親の様子を聞く事だった。
初めのうちは、画家が絵を書いている時も、見張りが付いていたが
何年も経つうちに、見張る事もしなくなり、絵を書いている間は、暇なので
皆で、賭けチェスに興じる時間となっていた。
画家は、可哀想なグラディスに同情していて、グラディスが聞きたい事には
何でも、答えてやっていた。
お飾りとはいえ、女王としての仕事は重く、この頃は、少しお痩せになられた
そんな話を聞いた後は、憎悪が膨らみ、魔法の力が、大きく働く。
そんなグラディスが、18歳になった時、事態は急変した。
女王が、急死したのである、その事は、グラディスには知らされなかったが
警護の者や、執事たちの、慌てる様子で、何か有ったなと
グラディスは、こっそり聞き耳を立てる。
「女王様が亡くなられては、もう、グラディス様を
人質にして置く必要は無い、直ぐにギリアン様から
抹殺しろと命令が来るだろう」「そうなったら、誰が殺る?」
「私達は、執事ですからね、やはり貴方達でしょう」と、執事が言う。
「なんだかんだ言っても、ずっと一緒だったからな~殺すのはちょっと、、」
「そんな事を言っていたら、私達が、殺されますよ」
「そうだよ、ギリアン様の命令は、絶対だからな」
「では、こういうのは、、、」皆は、ひそひそ声になった。
母上が亡くなられた、、、グラディスにとって、これ程の衝撃は無かった。
そして、自分の力の無さを嘆いた、母上を、助けられなかったと。
翌日、ギリアンからの使者が、馬を飛ばしてやって来た。
その使者の書状を見た、屋敷の者は、皆、青い顔になる。
やっぱり、グラディスを殺せと言う、命令だったからだ。
皆は、昨日話し合った通り、グラディスの部屋に鍵をかけ
出られ無いようにすると、窓から、火のついた布や、藁束をどんどん投げ込み
その窓も、外から釘を打って、出られ無いようにした。
直接、手を下すのが嫌だった皆は、グラディスを、焼き殺そうとしたのだ。
だが、グラディスは、もう、その部屋には居なかった。
危険を感じて、いち早く外に出て、屋敷の庭の、一番大きな木の上から
皆が、自分を焼き殺そうとしているのを、見ていたのだ。
そして、屋敷が燃えるのを、外に出て見ている執事や、警護の者を
全て、闇の魔法で抹殺し、燃えさかる屋敷の中へ、次々と放り込んだ。
怒りや憎悪が、マックスになっているグラディスは
馬小屋から馬を引き出し、ギリアンの居る、王都へと向かった。
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