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第五の国
逃亡の恐れがある為、グラディスには、乗馬はおろか
馬にも、近づけるなと言う、命令が有った。
屋敷の皆は、忠実にそれを守っていた、だが、散歩に行く他は
一日中、書庫で本を読んでいるグラディスを見張るのに
馬鹿馬鹿しさを感じた警護の者達は
夜中の見回りなど、とうに止めて、酒を飲み、高いびきで寝る毎日だった。
グラディスは、皆が寝静まった夜中に、こっそり馬に乗る練習をしていた。
その馬を飛ばして、王都に着いた時、丁度母の葬儀の列が、王宮広場を過ぎ
王室の墓地へと、向かう所だった。
「母上~」グラディスは、棺の傍まで、馬で近付き「何者だっ」と
捕らえようとする兵士達を、全て、闇の魔法で吹き飛ばした。
そして、棺を乗せている馬車を奪い、そのまま都の外れの森まで走り
棺を降ろして「母上」と、棺を開けて、母の姿を見る。
懐かしい母、優しかった母、助ける事が出来無かった母
万感の思いで、額にキスを送る。
だが「ん?」母の首には、美しいリボンが巻かれていた。
何で、リボンなど?そう思ってリボンを取ったグラディスは、驚愕した。
母の首に、くっきりと絞められた跡が有った。
リボンは、それを隠す為の物だったのだ。
「病死では無かったのか、、」こんな事をするのは、ギリアン以外には
考えられなかった、成人していくグラディスが、脅威になったギリアンは
母を亡き者にした上で、グラディスも殺そうとしたのだ。
もう、自分が王となる地盤は、固まった、女王など無用だと思ったのだ。
「何と言う事を!!」グラディスの怒りと、憎悪は、マックスになった。
母の棺を、森の中に隠し、馬車を走らせて、王都へと向かう。
「許さない、絶対に許さない!!」
鬼の様な形相で、戻って来たグラディスを見て「あいつは、、」
ギリアンが、顔色を変え「不届き者だっ、殺せっ」と叫ぶ。
そのギリアンの傍には、父に命を捧げると誓った、家臣達が居て
ギリアンの盾になり、ギリアンを守っている。
「お前らも、グルだったのかっ」グラディスは、真っ黒な闇の魔法で
家臣達を倒し、闇の魔法を受けて、苦しんでいるギリアンの胸に
ギリアンの剣を抜いて、突き刺した。
仇を討ち、馬を見つけて、母の元へ帰ろうとしたグラディスを
大勢の軍の兵士が、追って来る。
その兵士達を倒しながら、森の中を進んでいたグラディスは
緑の国の、迷いの森に出てしまったのだった。
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