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「ここは何処だ?」訝るグラディスは、見分けの滝に連れて行かれたが
滝が「この者は、闇の魔導士」と、告げた事により、恐れをなした皆は
誰も、グラディスに近づかなかった。
まだ、怒りや憎悪が収まっていなかったグラディスは、そんな皆を襲い
駆け付けた、兵士達に追われ、林の奥に有った、洞窟を見つけ
そこに逃げ込んだが、その洞窟は、ずっと奥まで続いていて
氷で覆われた出口の、氷を砕いて出た所は、雪と氷しか無い白い国だった。
グラディスは、そこで暮らし、時々、洞窟を通って緑の国や、赤の国に行き
街を襲って、必要な物を奪っていた。
10年ほど前、二匹のドラゴンが白い国に飛んで来たが
赤いドラゴンは傷ついていて、高い山の洞窟の前で
動けなくなってしまった。
一緒に付いて来た、黒いドラゴンに、グラディスは食べ物を与えた。
黒いドラゴンは、それを動けない赤いドラゴンの所に、運んで食べさせる。
このドラゴン達は、どこから来たのか、興味が有ったグラディスは
黒いドラゴンに乗ってドラゴンの国へ、行ってみた。
此処より北から来たのだ、きっと氷と雪に覆われた国だろうと思っていたが
着いた所は、雪の無い、高い山々がそびえ、その裾野には
緑の大地が広がっていた。
驚く事に、その緑の大地には、少数だが、人が住んで居た。
グラディスは、その人々の傍に降り、この国は、どんな国かと聞いた。
「この国は、ドラゴンの国です、人の世界と同じ様に
ドラゴンの国にも、王家が有り、代々の王は、赤いドラゴンでなくてはならず
王になるドラゴンには、額に丸い王の印が有ります」と言う。
「赤いドラゴン?実は、私の国に、赤いドラゴンが、来たのだが」
そう話すと、その人は驚き「誠ですか?その方は、前の女王様です」と言う
その女王は、亡くなった父の跡を継ぎ、若くして王の座に就いたのだが
それを、不服に思った、裏の王家のドラゴンに襲われ
行方が分からなくなっていた、それで、裏の王家の赤いドラゴンが
次の王として、君臨する様になったと言う。
「裏の王家とは?」第二の王家ですが、そこへ、たとえ赤いドラゴンが
生れたとしても、王家は継げません、まれに、表の王家に継ぐべきドラゴンが
居ない場合に、裏の王家から迎え入れる事も有りますが」「なるほど」
あの赤いドラゴンは、クーデターで敗れた、前の女王だったのか。
「貴方達は、なぜ、ドラゴンの国で暮らしているのですか?」
「遠い祖先が、ここで暮らしていたのか、ドラゴンに連れて来られたのか
よく分かりませんが、我々は、ドラゴンの為にも、働いています」
「え?」「この草原で、牛や、馬や、羊を飼って、ドラゴンの食糧を作り
あの岩肌に、代々の王家の家系図を彫ったり
細かい事が出来ないドラゴンの、手伝いをしています」「そうでしたか」
「女王様は、帰って来れないんでしょうか?」
「まず無理だな、羽が折れているんだ」「お可哀そうに、、」
そう言った人々は「帰って来れないのであれば、女王様の事は、ご内密に
女王様が生きている事を知れば、新しい王が、追っ手を差し向けましょう
我々も、この事は極秘にしておきます」
「優しかった女王様を、これ以上、苦しめたくありません」皆は、口々に言う
「分かりました、女王様は、私の所で、大事にお世話します」
「お願いします」と、言う事で、事情が分かったグラディスは、帰って来た。
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