第五の国

3/9
前へ
/120ページ
次へ
赤いドラゴンの所へ降りたグラディスは 「お前も、私と似たような境遇だったのだな、可哀想に。 もうどこへも行けないのだ、ここでのんびり暮らせ」と、頭を撫でてやった。 ドラゴンが、初めから、自分を怖がらずに、懐いて来たのは、ドラゴンの国で 人と共生していたからなんだなと、その事にも納得した。 数年が経ち、赤いドラゴンは卵を産み、黒い子供が産まれた。 黒いドラゴンは、飛べるようになった、その子をドラゴンの国に連れて行った その後、数年経ち、赤いドラゴンは、また卵を産んだ。 もう直ぐ、子供が生まれるだろうと言う時に、別の黒いドラゴンがやって来て 赤いドラゴンを巡って、前のドラゴンとの、激しい戦いになった。 前のドラゴンは、後から来た、ドラゴンに敗れ、どこかへ行ってしまった。 新しいドラゴンは、赤いドラゴンが寝ている隙に、卵を奪い どこかへ捨てて来た、そうしないと、赤いドラゴンは 自分を受け入れてくれないからだ。 卵が無くなった赤いドラゴンは、仕方なく黒いドラゴンを受け入れ 直ぐに、次の卵を産んだ。 グラディスは、ドラゴンの国に居た人から、興味深い話を聞いていた。 海の彼方に、もう一つ、国が有ると言うのだ。 どんな国だろうか、グラディスは、ドラゴンに乗って、その国を目指した。 ドラゴンの翼で、半日かけて飛んだ先に、その国は有った。 青の国の二倍ほどの広さの国で、国の殆どの面積を占めていたのは 水の中に生えている、青々とした、草だった。 初めは、麦かと思ったが、どうも違う様だ。 そう思って降り立ったグラディスを、その国の人々は 空からやって来た、神だと崇め、沢山の供物を供えた。 闇の魔導士だと、恐れられているこの私が、神だと言うのか。 グラディスは可笑しかったが、悪い気はしなかった。 供えられた、食べ物も、食べた事の無いものだったが、非情に旨かった。 グラディスが、旨い旨いと、喜んで食べるので 人々は、グラディスが帰る時に、その食料を持たせ 「また、来て下さいませ」と、名残惜しそうに、手を振った。 折角呉れた食料だが、グラディスは、その食べ方を知らなかった。 そんな時、卵は孵化したが、今度も、生まれたのは、黒いドラゴンで 親ドラゴンは、その子が飛べるようになると、ドラゴンの国に連れて行った。 グラディスは、この前行った国に、また行きたくなった。 私を神だと言って呉れる、あの国の民が、喜ぶ様な物を持って行こう。 そう思ったグラディスは、あの国に無かった、鉄製の農具や、台所用品を 手当たり次第に、赤の国から奪って、それを持って行った。 それを受け取った人々は、神様からの贈り物だと、大いに喜んだ。 「寿命が、残り少ないと知ると、こんな私でも、人を喜ばせようと する様だ、おかしな事だな」グラディスは、苦笑いしながら、そう言った。 「その国の人々は、みんな、お前と同じ様な黒い髪をしていて 肌の色も、我々とは、違っていた、どっちかと言うと、お前に似ていたな」 そう言って「あれが、例の食料だ、お前、食べ方が分かるか?」と聞く。 その袋を開けた蕗は、驚きの声を上げた「まぁ~お米だわ」 それは、まだ籾のままだった、このままでは、どうやっても食べられはしない 「この殻を外さないと、食べられないのよ」 「そうか、ならば、お前が使えば良い」グラディスは、そう言った。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加