第五の国

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そして、赤いドラゴンに「もう、飛べるようになったんだ。 自分の国に帰って、女王としての務めを果たせ 今の王には、ドラゴンも人も、不満を持っている様だからな」と言った。 赤いドラゴンは、頷くと、別れを告げる様に、グラディスに、頭を擦り付け カルルを見て、一緒に行こうと言う素振りをしたが カルルは、首を振り、蕗の傍から、離れなかった。 赤いドラゴンは、諦めて、大きく羽ばたき、空へ飛ぶと、上空で二回旋回して 遥か彼方へ、飛んで行った、カルルは、じっとその行く先を見つめていた。 それを見送ったグラディスは、張っていた気が緩んだのか ガクッと体を崩した「大丈夫?」蕗が、慌てて体を起こす。 「もう駄目だ、頼む、私の最後の望みを聞いてくれ、、私が死んだら あの優しい民が居る国に、骨を埋めて欲しいんだ」 苦しい息で、グラディスは言う。 「分かったわ、きっと、その国に貴方を埋葬してあげる」 蕗が、そう言うと、グラディスは、ちょっとだけ微笑んで 「最後に、お前に、会えて、、良かった、、」と言って、息を引き取った。 驚く事に、息を引き取ったグラディスの身体は、見る見る白い骨になった。 その骨を、回復薬を使い切って、空になったリュックに入れながら 「可哀想に、この人の一生って、何だったのかしら」 ただ、ただ、怒りと憎悪の中で暮らした、グラディスが、哀れだった。 リュックを背負い、グラディスが呉れた米袋も積んで、カルルに乗って帰ると 屋敷の者や、待っていたハルドや兵士達も、歓声を上げて喜んだ。 そして、もうドラゴンは、自分達の国に帰った事 闇の魔導士グラディスは、死んだ事を皆に知らせる。 それを聞いた皆は、また大歓声を上げ、大喜びした。 「これで、長年の苦しみから、解き放たれました。 蕗様、誠に有難う御座います」ハルドが、皆を代表して、蕗にお礼を言い 「早速、陛下にも、お知らせせねば」と、兵士を引き連れ、帰って行った。 蕗は、屋敷の者に知られない様に、グラディスの骨が入っているリュックは カルルの部屋の隅に仕舞い、お祝いだと、デルフが腕をふるった ご馳走を食べて、その日は、早めにベットに入ったが、眠れなかった。 グラディスの事、ドラゴンの国の事、自分と似た人が住むと言う、第五の国 米作りをしていると言う、そこは、一体どんな所だろう。 あれこれ考えて、目が冴えるばかりだった。 翌日は、国中が、喜びで沸き立っていた。 「蕗様が、闇の魔導士グラディスを倒した!!」「ドラゴンも居なくなった」 「もう、家畜を取られなくて済む」「家を、壊されなくて済む」 「兵士達も、怪我をしなくて済む」「やったっ」「やったっ~」 「お祝いだ」「お祝いだ~」口々にそう叫び 広場には、酒樽が置かれ、皆に振舞われ 子供たちの頭上には、お菓子が、ばらまかれた。 音楽隊が、陽気な歌を奏で、それに合わせて歌ったり、踊ったり 大騒ぎする国民を、ジュレームとミリアも、王宮のテラスから見ていた。
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