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しかし、前の神様と違って、赤いドラゴンに乗って来た、若い娘の姿を見て
「前の神様は、どうしたのであろうか?」集まった皆は、騒めいた。
カルルから降り立った蕗の前に、長らしき老人が近寄り
「貴女様は、もしかして、前の神様の娘様ですか?」と、聞いた。
蕗は、娘では無く、知人だと告げ、グラディスが無くなった事を話した。
「なんと!!我々の為に、様々な道具を与えて下さった
あの神様が、亡くなられたとは、、」皆は、力を落とし、涙ぐんだが
グラディスが、この国で永遠に眠りたいと言う、遺言を残したと聞き
涙を拭き、小高い丘の上の、大きな木の下に、グラディスの墓を作った。
「ここならば、皆が働く姿も、良く見えます」「有難う御座います」
蕗は、その墓へ、グラディスの骨を納めた。
人々は、列を作って、グラディスの墓に参り、手を合わせている。
その丘から見える景色に「本当に、良い所ですね~」
眼下には、植えられたばかりの稲が揺れる田んぼが、どこまでも広がっている
グラディスが言った通り、ここの皆は、全員黒髪で、蕗と同じ肌の色だった。
長に案内されて、長の家に行くと、炊き立てのご飯と、焼き魚と
根菜類の煮物と、味噌汁と言う、食事が出され、傍には、箸も有る。
夢にまで見ていた、懐かしい日本食、蕗は、夢中で食べる。
美味しい!!何て美味しいんだ!!その様子を、長は、にこにこしながら見て
「前の神様も、そうやって、美味しそうに食べて下さいました」と、言った。
「そうそう、せっかくお米を頂いたのに、籾を外す事を知らなくて、、
玄米を精米する方法は、私も知っていたのですが」
そう聞いた長は、食事が済んだ蕗を、納屋に連れて行き
「この臼で、籾を外すのですが、臼は、神様の所には、無かったんですね」
と、言った、蕗は、その臼をよく見て、帰ったら作って貰おうと思った。
皆の暮らしぶりが見たいと言う、蕗の為に、長は、民家に連れて行ってくれた
「このお味噌は?」「私が作った物です」そこの女主人が、にこにこして言う
各家庭で作るので、味は、その家に伝わる味なんだと言う。
「わしは、酒を作ってるんだ」そう言って、隣りの老人が見せた酒は
濁り酒で、良い香りがした。
醤油を作っている人も居た「ああ、このお醤油で煮たので
あんなに美味しかったんですね~」蕗は、さっきの煮物を思い出した。
木で、様々な形と大きさの桶を作っている、桶屋さん。
下駄に似た、履物や、草鞋を作っている人、島の中央の山の傍には
窯が有り、お皿や茶わん、味噌や塩を入れる壺などを、作っていると言う。
「わぁ~、これは大きいですね~」「それは、水瓶です」
その瓶に水を入れて、炊事をする時に使うのだそうだ。
石鹸も無く、灰汁で洗濯すると言う。
それは、テレビの時代劇でよく見た、昔の日本の生活と同じだ
蕗は、そう思った。
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