第五の国

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しかし、前の神様と違って、赤いドラゴンに乗って来た、若い娘の姿を見て 「前の神様は、どうしたのであろうか?」集まった皆は、騒めいた。 カルルから降り立った蕗の前に、長らしき老人が近寄り 「貴女様は、もしかして、前の神様の娘様ですか?」と、聞いた。 蕗は、娘では無く、知人だと告げ、グラディスが無くなった事を話した。 「なんと!!我々の為に、様々な道具を与えて下さった あの神様が、亡くなられたとは、、」皆は、力を落とし、涙ぐんだが グラディスが、この国で永遠に眠りたいと言う、遺言を残したと聞き 涙を拭き、小高い丘の上の、大きな木の下に、グラディスの墓を作った。 「ここならば、皆が働く姿も、良く見えます」「有難う御座います」 蕗は、その墓へ、グラディスの骨を納めた。 人々は、列を作って、グラディスの墓に参り、手を合わせている。 その丘から見える景色に「本当に、良い所ですね~」 眼下には、植えられたばかりの稲が揺れる田んぼが、どこまでも広がっている グラディスが言った通り、ここの皆は、全員黒髪で、蕗と同じ肌の色だった。 長に案内されて、長の家に行くと、炊き立てのご飯と、焼き魚と 根菜類の煮物と、味噌汁と言う、食事が出され、傍には、箸も有る。 夢にまで見ていた、懐かしい日本食、蕗は、夢中で食べる。 美味しい!!何て美味しいんだ!!その様子を、長は、にこにこしながら見て 「前の神様も、そうやって、美味しそうに食べて下さいました」と、言った。 「そうそう、せっかくお米を頂いたのに、籾を外す事を知らなくて、、 玄米を精米する方法は、私も知っていたのですが」 そう聞いた長は、食事が済んだ蕗を、納屋に連れて行き 「この臼で、籾を外すのですが、臼は、神様の所には、無かったんですね」 と、言った、蕗は、その臼をよく見て、帰ったら作って貰おうと思った。 皆の暮らしぶりが見たいと言う、蕗の為に、長は、民家に連れて行ってくれた 「このお味噌は?」「私が作った物です」そこの女主人が、にこにこして言う 各家庭で作るので、味は、その家に伝わる味なんだと言う。 「わしは、酒を作ってるんだ」そう言って、隣りの老人が見せた酒は 濁り酒で、良い香りがした。 醤油を作っている人も居た「ああ、このお醤油で煮たので あんなに美味しかったんですね~」蕗は、さっきの煮物を思い出した。 木で、様々な形と大きさの桶を作っている、桶屋さん。 下駄に似た、履物や、草鞋を作っている人、島の中央の山の傍には 窯が有り、お皿や茶わん、味噌や塩を入れる壺などを、作っていると言う。 「わぁ~、これは大きいですね~」「それは、水瓶です」 その瓶に水を入れて、炊事をする時に使うのだそうだ。 石鹸も無く、灰汁で洗濯すると言う。 それは、テレビの時代劇でよく見た、昔の日本の生活と同じだ 蕗は、そう思った。
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