第五の国

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立て続けに、二人の命を救った蕗を見て、皆は「やっぱり神様だ」と 言い合って、両手を合わせて、蕗を拝んだ。 「他に、怪我人や病人は居ない?回復薬は、あまり沢山じゃ無いけど」 出来るだけ、人助けがしたい、蕗はそう思って あちこちの集落を歩き、白米と漬物ばかり食べていて、脚気になっている人に 麦や粟や稗などを食べれば、直ぐに良くなるわと、アドバイスし 血圧が高い人には、塩分を控えるようにと注意し 甘い物が、こよなく好きだと言う人には、糖尿病の恐ろしさを教え 食事は控えて、良く運動する様にと言った。 後は、風邪を引いている人が三人、お腹の調子が悪い人が二人 小さな切り傷や、擦り傷が有る人達まで診て、回復薬は、一本だけ残った。 蕗は、それを長に渡し「次に私が来るまで、誰かが病気になったら これを飲ませて下さい」と、長に渡した。 「あら、カルルは?」 人助けに夢中で、カルルの事を、すっかり忘れていた蕗だったが カルルは、子供達と、海に潜って遊んでいた。 子供達の母親が、浜辺に火を熾し、その周りに、 ずらりと串に刺した魚を並べ、こんがり焼いた物と おにぎりを沢山握って、流木で作った、長いテーブルに並べ 「みんな~上っておいで~ご飯ですよ~」と、海に向かって叫ぶ。 「わ~い」子供達と、カルルが、海から上がって来た。 テーブルの前には、平べったい石が置かれていて、子供達は そこへ、ちょこんと座ると、一斉に、おにぎりに手を伸ばす。 カルルも、同じ様にチョンっと座っている。 その前には、焼き魚とおにぎりが、山のように置かれていた。 カルルは、美味しそうに、それを口に放り込む。 食べ終わった、子供とカルルは、また海に入って行った。 「カルルって、本当に子供が好きなのよね~」 蕗と、皆は、そんな子供とカルルを、笑顔で見ていた。 散々遊ぶと、子供達は、カルルを連れて、河口口から川へと行き 川の中で泳いだり、水遊びをして、体の海水を落とし 冷たい川の水で、冷えた体を、河原の熱い石の上で乾かすと のっしのっしと歩く、カルルの背中や、尻尾に乗って、集落まで帰って来た 「カルル、また明日ね~」「また遊ぼうね~」子供達はそう言って それぞれの家に帰って行った。 「カルル、楽しかった?私達も、ご飯にしましょう 皆が、ご馳走を作ってくれているのよ」 其の日の夕食は、蕗の為に、山や畑や海から取って来た 最高の食材を使った、ご馳走が、テーブル一杯に並べられた。 カルルの前にも、大きな肉の塊や、魚や、好きだと聞いた果物も、並べている 皆で、楽しい話をしながら、食べる食事は、この上ないご馳走だった。 翌日、帰ると言う蕗に、皆は、味噌や醤油、精米したお米など 蕗の国には無いと聞いた物を、沢山持たせ 「有難う御座いました~」「また来て下さいね~」と、名残りを惜しんだ 子供達も「カルル~また来てね~」「また遊ぼうね~」と ウルウルする目で、手を振った。 「本当に、良い人達だったわね~」蕗も、名残惜しかった。
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