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蕗は「私、神様じゃ無いわ、蕗って言う名前が有るから、蕗って呼んで」
そう言うと「分かりました、これからは、蕗様とお呼びします」
と、二家族は言い、他の皆にも、この事を伝えたので
蕗は、この国でも、やっぱり蕗様と呼ばれるようになった。
緑の国より、気温が少し高いダーナンでは、もう日中は暑い。
カルルは、早くも、子供達と海で遊んでいた。
翌日の昼まで掛かって、蕗は、国中の者の健康診断を済ませた。
田んぼには、この前来た時は植えたばかりだった稲が、もう大きく育ち
暑い日差しの中で、青々と育っていた。
「私も、自分の国で、米作りをしたいと思っているのですが
何も分かりません、一から教えて頂けますか?」蕗は、長に頼んだ。
「良いですとも、では、まず土作りから」長は、丁寧に教え
田んぼへ連れて行って、実際に見せながら
「次に重要なのは、水加減です」と、植えたばかりの時はこの位
株が大きくなって来たら、この位と教える。
蕗は、せっせと大事な所を、メモして行く。
「花が咲いて実が付き、稲穂が首をたれ、全体に黄色くなったら、収穫です
収穫した稲は、これで、穂を落とします」と、倉庫へ連れて行き
稲こきと呼ばれる道具を見せた。
それは、鉄製の大きな櫛の様な、道具だった。
「この国でも、鉄が採れるのですか?」蕗が驚いてそう聞くと
「いいえ、これは、流れ着いた木や板についていた物を
大事に溜めていた物で、作ったのです」と、言う。
ダーナンは、海に囲まれているので、あちこちの浜には漂着物が上がる。
主に流木で、それは焼き物を作る窯で使われていた。
ある時、その窯の灰の中に、不思議な物を見つけた。
それはとても固い板状のもので、それを木の棒の先に括り付け
土を掘ると、木よりも深く降れ、木を削っても、石で作った斧より
綺麗に削れた、これは、素晴らしい!!それからは、流木をよく見て
この硬い金属が付いていないか探し、見つけた物は、大事に取って置いた。
ある程度集まったので、それを窯の中で焼き、柔らかくなった物をくっつけ
櫛状になる様に、石斧で叩いて整形して、これを作ったと言う。
「私の、祖父の時代の話ですが、それからも、これは、収穫時には
無くてはならない物として、大事に使い続けているのです」
「そうでしたか」蕗はそう言ったが、船を持っていると言えば
青の国の人々だが、遠くまで行く必要が無いため、大きな船は作らない。
有るのは、漁に使うための、小さな船だけだ。
もしかしたら、五つの国の、はるか彼方に、鉄を使った
大きな船を操る国が、有るのかも知れないと、思った。
その船でも、まだダーナンや、自分達の国までは、来れないのだ。
カルルの翼でも、行けるとは、思えなかった。
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