米作り

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そんな冬は、怪我人は少ないが、風邪を引く人や、出産者が多く 蕗は、相変わらず忙しい、そんな中でも、木工職人に頼んで 木の臼を作って貰い、グラディスに貰った米の籾を外し 風車小屋に持って行って、精米して貰った。 その時に出来た糠で、蕗は糠床を作った。 「蕗様、これは何ですか?」初めて見る糠床に、デルフは興味を持つ。 「ここに、野菜を漬け込むと、美味しいお漬物が出来るのよ」 「お漬物?」「ええ、ご飯に良く合うの」 そう言って、キャベツの葉を、二、三枚漬け 「初めて漬ける物は、捨て漬と言って、使わずに捨てるのよ」と、教える。 その後に、人参や蕪、キャベツ等を漬け、糠漬けは、翌日の食卓に出された 「これが、お漬物ですか?」皆は、ポリポリと食べて 「美味しいですね」「お酒が欲しくなりますね」等と、感想を言った。 「ご飯には、お漬物が無くっちゃね~」蕗はそう言いながら 搗きたての米で炊いた、ご飯と一緒に食べ「あ~幸せ」と、喜んだ。 「この味噌と言い、醤油と言い、ダーナンには、良い調味料が有りますね」 デルフは、蕗に教わって作った、蕪を煮た物の上に 味噌を掛けた物を食べながら、しみじみと言う。 蕗を喜ばせようと、デルフが作る夕食は、日本食が多くなって 皆も、すっかり日本食贔屓になっていた。 「明日は、レイモンドさんの誕生日ですね、レイモンドさん 何か夕食に、ご希望は?」デルフがそう聞くと。 「まだ、その醤油が有れば、すき焼きを所望したいのですが」 「すき焼き!!良いですね~」カラジとチャドが、目を輝かせる。 醤油を貰って帰った時、蕗は、念願のすき焼きも、作って貰った。 すき焼きは、皆に大好評だったが、大切な調味料である醤油を 大量に使うと言って、避けられていた。 「どうしましょう、蕗様」「無くなったら、また貰って来るから 明日は、すき焼きにしましょう」「やった~っ」チャドが、大喜びする。 皆も「明日が楽しみですね~」と、にこにこ顔だ。 『今度は、味噌や醤油の作り方を、教えて貰わなくっちゃ』蕗は、そう思った やがて春が来た、雪はすべて消え、春の花が、次々と咲く。 今迄、家に居た年寄り達も、外に出て、春を楽しむ様になった。 田んぼも、良く耕して、水を入れた、ツバメが飛び交い 春の花も咲き終わった頃、ダーナンで貰った種もみを、水に浸け 芽吹いた苗を育てる。 その苗が、15センチ位に育ったら、田植えだ。 ダーナンの長に、教えて貰った事を、忠実に守って、次々と植えて行く。 花番達もやって来て、手伝ってくれたので、あっという間に終わった。 青々とした苗が、空を映す水面の上で、風に揺れる。 「みんな、有難う」蕗は、大満足だった。
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