貴族になった蕗

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しかし、直ぐにまた元の静寂に戻り、周囲の人々は マネキン人形の様に動かなくなった。 王様は、言葉を続けた「蕗殿には、一級貴族の身分と 前の魔導士が使っていた土地、及び屋敷、馬車を与え 支度金として2000万キラ、月々の手当ては、300万キラとする」 と、厳かな声で言った後、ちょっと心配そうな顔で 「受けて下さるか?」と、聞いた、断ったら、泣く?そんな感じがする。 王様を、悲しませたくない、そう言ったカラジの言葉がよく分かる。 「有り難く、お受けいたします」蕗の言葉に 王様は、子供の様な、無邪気な笑顔になり「よろしく、頼みますぞ」と言った そして、カラジに目を移し 「癒しの魔導士様を見つけてくれたのは、其方だな」と、言った。 カラジは、そのままの姿勢で、胸に手を当て「はいっ」と、返事をした。 「よくぞ見つけてくれた、褒美として、200万キラを与える」 「ははっ、有りがたき幸せ」カラジは、嬉しさに目を潤ませている。 「其方は、蕗殿の傍に付き、早くこの国に慣れて下さる様 あらゆる事に、手を尽くしてくれ」「ははっ、仰せのままに」 王様は、満足した顔で「では、蕗殿、宜しくお願いしますぞ」と言って 椅子を立ち、しずしずと部屋から消えた。 蕗とカラジも、部屋から退出すると、二人の後ろから 大きな革の袋を抱えた男と、それより小さな袋二つを抱えた男が 一緒に付いて来た。 宮殿の、階段を下りると、立派な装飾をされた、大型の馬車と 蕗たちが乗って来た、小型の馬車が、並んで待っていた。 カラジは、大きな馬車に蕗を乗せ、座席に、二人の男が持って来た 大きな袋と、小さな袋を積み込み、もう一つの一番小さな袋は 小型の馬車に積み込み「これは、王様から頂いた物だ、母さんに渡してくれ それが終わったら、デルフさんと、助手三人を、花屋敷に連れて来てくれ」 と、頼んだ「分かった」チャドは、ハイッと鞭を振り、馬車を走らせた。 カラジは、蕗が乗っている、大型の馬車の御者になり、馬車を走らせたが 来た道から外れ、草原が続く道を走り続ける。 何処へ行くのかしら?話し相手も居ない蕗は、向かいの席に有る 袋の中を、覗いてみた、中には、パチンコ玉くらいの大きさの 丸い金の粒が、ぎっしり入っていた。 もしかして、これが、キラと言う、この国の貨幣なのかしらと、思う。 蕗が思った通り、それは、この国の貨幣で、支度金と一月分の手当てだった
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