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田植えが終わったと聞いて、ジュレームも、ジョアンを連れて見に来た。
「これが、米の苗か、水の中で育つとは、面白い作物だな」
ジュレームがそう言っている横で、ジョアンは、ぴょんぴょん撥ねる
小さなカエルを捕まえようと、夢中になっている。
田んぼに逃げ込んだカエルを、追っているジョアンを
「おっと、危ないっ」後ろから、ジョアンの服を掴んで
田んぼに落ちるのを阻止したのは、一緒に来ていた、シゼルだった。
カエルが欲しいと、駄々をこねるジョアンに、蕗は、小さな器に
三匹のオタマジャクシを入れ「ジョアン様、これを育てると
カエルになりますよ」と、言った。
「わぁ~ほんと?シゼル、これ持って帰って」「はい、承知しました」
ジョアンは、オタマジャクシをシゼルに預け、シゼルは、供の者に渡す。
ジョアンは「カルルと遊ぶ」と、蕗の屋敷へ行きたいと言いだした。
「では、皆様、お茶でも」蕗は、ジュレームとシゼルも、お茶に誘う。
「そうだな、病院の様子も見たい」ジュレームも、そう言い
全員、馬車に乗って、蕗の屋敷へ行き、ジョアンは、カルルに乗って空を飛び
ジュレームとシゼルは、病院を見た後、蕗の屋敷で、お茶を飲んだ。
「このお茶は、何だ?凄く香ばしいが」ジュレームがそう言う。
「このお茶は、玄米を炒った物を混ぜている、玄米茶です」と、蕗が答える
「これからの季節には、良い飲み物ですね」
シゼルも、美味しそうに飲んで言う。
「エディ様とセリナ様は、お変わり有りませんか?」蕗がそう聞くと
「蕗のお陰で、二人共、健やかだ」「もう直ぐ、つかまり立ちしそうです」
ジュレームとシゼルは、嬉しそうな顔で、報告する。
「ジョアンが、二人の面倒をよく見てくれてな
二人共、ジョアンの顔を見ると、泣いていても、泣き止む位なんだ」
「それは、嬉しい事ですね」「その三人の姿を見ていると
無理をしてでも、産んで良かったって思っているんだ」
ジュレームは、しみじみとした声で言った。
「これも、蕗様のお陰です、車椅子を使うなどの助言を頂いたからこそ
出来た事ですから」シゼルも、妊娠から出産までの苦労を、振り返って言う。
もしも、蕗が居なかったら、この苦労は、もっと大きな物だった筈だ。
下手をすれば、ジュレームの秘密が、ばれたかも知れない。
「いいえ、長く生きて来た、年寄りの思い付きです」蕗のその言葉は
20歳にも満たない、初々しい女の子の姿と、まったく一致していなかった。
ひとしきり、空を飛んで来たジョアンが「僕にも、おやつ~」と、言う。
「はいはい、苺たっぷりのタルトをどうぞ」蕗の言い付けで
デルフが持って来た、真っ赤な苺が、キラキラ光っているタルトを見て
「わぁ~美味しそう!!カルルの分は?」と、ジョアンが聞く。
「カルルの分も、ちゃんと有りますよ」デルフが、にこにこしながら言う。
「じゃ、僕、カルルと一緒に食べる」「では、カルルの部屋へ行きましょう」
ロナーとトーマに、砂糖を控えて、三倍ほどの大きさに作った
カルルの分を持たせ、デルフは、ジョアンをカルルの部屋に案内する。
「カルル、おやつ、一緒に食べよう」そう言うジョアンに
カルルは、顔を擦り付け「カルル~」と、喜びの声を上げる。
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