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新しい田んぼの稲は、病気になりやすいと、ダーナンの長から聞いていたが
稲は、病気にもならず、出穂し、花が咲いた。
田植え直後から、時々見に来ていたダニエルも、花が咲いたと聞き
見に来て、花の様子をスケッチしている。
「もう少し若かったら、私も、カルルに乗せて貰って
ダーナンに行けたのですが」ダニエルは、残念そうに言う。
ダーナンには、まだダニエルの知らない、植物や動物、昆虫などがいる筈だ
それを、直接見てみたかった、と言う。
「大きな船が、作れると行けるのですけど」蕗も、残念そうに言う。
この三国にも、ダーナンにも、大きな船を造れる技術者は、居なかった。
大きな船が有れば、大量に荷物が積める、そうなれば
ダーナンとの国交も盛んになって、お互いの国は潤うのに。
やがて、秋が来て、田んぼは黄金色に輝き、収穫期になった。
花番達を始め、屋敷の手の空いている者が、すべて参加して
稲の刈り取りを済ませた、稲を刈り取った後の田んぼに
蕗は、テレビなどで見ていた稲を掛ける、長い竿を渡した物を作らせ
「こんな風に、掛けてね」と、見本を見せ、皆も、面白い事をするな~
と、言いながら、掛けて行った。
すっかり乾燥した稲を、赤の国の職人に頼んで、作って貰ったセンバで
稲をこき、木の臼で籾を外し、玄米になった物を、風車小屋で精米する。
「やっと、お米になったわ」蕗が、真っ白な新米を手にして、喜ぶ。
「お米って、随分手が掛かる食材ですね~」カラジがそう言う。
蕗は「そうなの、米って言う字は、八十八を、組み合わせているのよ
お米作りには、八十八の手が掛かるからだと、言われているの
田んぼ作りから、水の調整、暑い中での草取り、随分、皆に世話を掛けたわ
明後日は、皆で、収穫祭として、お米パーティをしましょう」と、言った。
「お米パーティですか?」「ええ、お米を使った料理を、いっぱい作るの」
料理と聞いて、デルフが顔を出し「私の出番ですか?」と聞く。
「ええ、貴方の出番よ、明日、青の国に、材料を買いに行きましょう」
「分かりました」デルフは、ワクワクした顔で、もう、腕まくりをした。
翌日、蕗は、デルフと一緒に青の国に行き、新鮮な魚介類を買った。
青の国の漁師達は、蕗が買った魚介類の倍ほど「お土産です」と持たせる。
「あらら、悪い事しちゃった、私が来たのは間違いだったわ」
蕗は、そう言ったが「青の国の皆さんも、蕗様が、大好きですからね~」
デルフは、そう言って、山の様になった魚介類を、せっせと馬車に積んだ。
屋敷に帰った蕗とデルフは、その手で、三人の助手にも手伝わせて
魚を捌き、料理の下ごしらえをする。
そこへ「蕗様、頼まれた野菜です」と、チャドが、野菜を運び込む。
「有難う」その野菜も、下ごしらえをし、明日のパーティに備える。
カラジは、ディグとビルドたちと共に
乾いた田んぼの中へ、パーティ会場を作っていた。
「野外パーティは、久しぶりですね」「ええ、私は、子供の時以来です」
レイモンドと、マーラも、手伝いながら、笑顔が絶えない。
そこへ、ロブ親子が、鉢植えの花を運んで来て、文字通り会場に花を添えた。
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