敵襲

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敵襲

楽しい収穫祭も終わり、緑の国は、やがて来る冬までの、休息期に入っていた 家畜に冬に食べさせる、牧草を仕舞う倉庫も満杯になった。 爽やかな風が吹き渡り、青の国では、干物作りが盛んに行われていた。 その、緑の国と青の国が見える海に、一隻の大型帆船が現れた。 見た事も無い船に、緑の国の人も、青の国の人々も、大騒ぎになった。 その知らせが、まだ王宮に着く前に いきなりその船から、ド~~ンッと言う音がしたと思ったら 緑の国の沿岸に並んでいた、建物が吹っ飛んだ。 大砲の玉が飛んで来たのだ。 たちまち、衝撃で飛ばされた者、建物の瓦礫に当たって、怪我をした者 建物の下敷きになっている者等、怪我人が続出した。 駆け付けた、将軍ハルドは「まず、怪我人を救い出して、病院へ」と 命令した、敵の船は遠い、弓矢が届く距離では無い。 次いで「住人を、全員、高台へ逃げさせよ」と、部下に命じる。 何事かと、外に出て來る住人に「高台へ急げっ」部下たちが、先導する。 直ぐに、第二の砲撃が有り、またも多くの建物が、吹き飛んだ。 青の国の国王ルシアンは、この様子を見ると 「国民全員を、西の町へ避難させよ」と、命じた。 砲撃は、いつ、青の国に向かられるかも知れない。 なるべく、船から遠い場所、砲撃が届かない場所へ 国民を、避難させたのだ、そして、帆船に近い沿岸に兵士たちを集めた。 蕗の病院には、次々に怪我人が運び込まれ、蕗は、その治療に追われた。 手が足りないので、屋敷の皆も、怪我人の手当てに当たる。 宮殿から駆け付けたジュレームも、ハルドの傍に行き 「あれが、その船か、蕗が心配した通りになったな」と、帆船を睨む。 「陛下、ここは、危のう御座います、砲弾が、当たらない所まで お下がり下さい」ハルドはそう言ったが「ここで良い」 ジュレームは、そこから動かず 「何か、良い手立ては無いか」と、ハルドと、付いて来たシゼルと三人で 話し合ったが「弓矢が届かないのでは、打つ手が無いな」と、腕を組む。 「今は、遠くに居るが、近付いて来て、あの砲撃をされたら 王都は、壊滅します」シゼルが、眉をひそめて言う。 「むむむ」ハルドも、苦虫を噛み潰したような顔で、唸る。 そう言っている時、帆船の反対側からも、砲弾が飛び出し ルシアンの「全員伏せろっ」と言う声が終わらないうちに 青の国の、岩壁を打ち砕いた。 幸い、怪我人は出なかったが、その威力の凄さに、兵士達は青ざめた。 こんな弓矢では、到底かなわない、もう終わりだ。 全員の身体から、戦う力が抜けて行く。
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