敵襲

5/9
前へ
/120ページ
次へ
ラグアの人達は、自分達まで癒してくれた、あの優しい蕗の姿と カルルに乗って、黒いドラゴンをやっつけたと言う姿が うまく重ならなくて、戸惑った。 その蕗は、王宮に行って、ミリアや二人の王子と 王女の健康状態を診た後、ジュレームの所へ行っていた。 ジュレームは、ガノンから聞いた、ラグアの国の事を話し始めた。 遥か東に有る、ラグアの国は、緑の国によく似た水が豊富で 巨木がそびえる森を持つ国だった。 その国に、壊れた船に乗った、一人の男バイロンが現れた。 バイロンは、平和な農耕民族、ラグアの人が、知らない事を 沢山知っていた。 バイロンは、ラグアの北に有る、赤い岩だらけの島を見て 引き上げていた、船の残骸を燃やし、鉄だけを取り出すと それで斧を二つ作り、森の木を切らせて、船を造らせた。 それまでの石斧と違い、素晴らしい切れ味の斧に、ラグアの人は驚いたと言う その船に乗って、北の島に行ったバイロンは、赤い岩石から鉄を取り出し その鉄で、農耕機具や、台所用品まで、便利な道具を作ってくれた。 畑を耕す事も、収穫する時も、格段に楽になり、収穫も増え 生活が便利で、豊になったラグアの人は、バイロンを神の様に崇めた。 そのバイロンは、更に大きな船を造らせ、ラグアより、東に点在している 島々を、侵略し、その国の産物を強奪させた。 ラグアの人は、心を痛めながらも、バイロンに従うしか無かった。 もう、バイロンは、ラグアの国を自分の物にしていて、逆らう者は 直ぐに、縛り首にしていたからだ。 やがてバイロンは、あちこちの島々から手に入れた、薬を調合して 火薬を作り、ふんだんに有る鉄を使って作った 大砲を積んだ、大型の船を造り、更に遠くの島や国を襲った。 子供は、小さい時から人の物でも欲しければ奪えと言う、教育をされ ラグアの国は、恐ろしい凶悪な国へとなって行った。 東側の国は、殆ど制圧したバイロンは、西の方を侵略しようと 船を出したものの、その船は、いくら待っても帰って来なかった。 「嵐に、あったのでしょう」側近がそう言うと 「腰抜けどもがっ!!」怒り狂ったバイロンは、更に大型で 波や、嵐にも負けない様な船を造らせたが、それに積む大砲も 新しく作らねばならず、出来上がるまでは、長い年月が掛かった。 バイロンは「成果を出すまでは、帰って来るな」と ガノンたちを、その船に乗せ、送り出したのだと言う。 「酷い人ですね」「ああ、まるで、闇の魔導士みたいな奴だ」 「また、次の船を造って、やって来るのでしょうか?」 「それは無いだろうと、ガノンは言っていた、大きな木も、鉄も、取り尽くし さほど、残ってはいないので、大型の船を造るのは無理だし、歳を取った バイロンは、もう、それ程長くは、生きられ無いだろうとも、言っていた」 「そうですか、私は、ラグアの人に頼んで 荒海を超えられる船を、造って貰いたいと思っているのですが」 蕗の言葉に、ジュレームとシゼルは驚いた。 「まさか、こちらから、ラグアへ行くと言うのですか?」 「いいえ、私が行きたいのは、ダーナンです、回復薬や 赤の国の、鉄製品などを積んで、持って行ってやりたいんです」
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加