貴族になった蕗

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蕗は、袋の口を元通りに縛ると、外を見た。 青い花が咲く、一面の草原で、それは「まるで海の様だわ」と蕗は呟く。 馬車の車輪のすぐ近くにも咲いている、その花をよく見ると ネモフィラより濃く、桔梗より薄い青色の、四辺の花だった。 やがて馬車は、その青い海に浮かぶ様に建っている、白亜の屋敷に着いた。 馬車を停めたカラジは「蕗様、今日から住む、蕗様のお屋敷です」と言い 蕗の手を取って、馬車から降ろした。 「ここが?、、、」あまりの大きさに、蕗は、それ以上の言葉が出なかった。 こんな大きなお屋敷、いくら若くなったとはいえ、掃除が大変だろうな~ 蕗は、お屋敷を貰った事を、後悔した。 「まず、蕗様のお部屋を決めましょうか、このお屋敷は、三階建てなので やはり、三階が良いでしょうね、見晴らしも良いですから」 カラジは、張り切っていた、この若さで王様から、直々のお声掛りで 蕗の傍付き家臣に、任命されたのだ、父は、どんなに喜ぶだろうか 母は、どんなに自慢するだろうか、それを思うと、ワクワクする。 王様から貰った、褒美のお金で、姉のリエラの結婚式も 華々しく、あげさせてやれる、弟のチャドだって、、、そうだ!!カラジは 三階に案内しながら「蕗様、チャドを蕗様の馬番に雇っても良いでしょうか」 と、聞いた「馬番って?」「馬車の御者を務めたり、馬の世話をする者です」 「カラジと、チャドが良いなら、私も良いわよ」「有難う御座います」 「そう言えば、カラジも、チャドも、馬の扱いが上手みたいね」 「はい、私の父は、三級貴族のソーテール様の馬番を務めています。 それで、小さい頃から、馬には慣れ親しんでいるんです」 「そうだったの、この国での移動手段は、馬車だけなの?」 「はい、100年前に、この国に、迷い込まれたダニエル様は 元の世界には、鉄道と言うものが有ったと、言っておられましたが」 「えっ、100年前にも、私みたいな人が居たの?」 「はい、ダニエル様は、生物学者だと、見分けの滝に言われて 今でも、教育者として、子供たちの教育に当たっています」 「ち、ちょっと待って、100年前と言ったら もう100歳は、ゆうに超えているんでしょ、まだ、健在なの?」 「はい、この国は、魔法が満ちている所為か、人の成長は、ゆっくりみたいで その点も、興味が有ると、ダニエルさんは、研究しているそうです」 「そうなの」蕗は、一度、その人に会ってみたいと思った。 三階にある部屋を、色々見た蕗は、一番、見晴らしの良い部屋に決めた。 広いテラスに出ると、爽やかな風が、甘い香りを運んでくる。 「この香りは?」「回復薬を作る、リフの花の香りです」 テラスからも、その青い花の海が見え、その中で、何かしている人が見える 「あの人達は?」「リフの花の手入れをしている、花番です。 前の魔導士様、モトス様の時からの花番ですが、モトス様が亡くなられても 花の手入れを止める訳には行きませんので、そのまま働いていますが これからも、あの人達を、蕗様の花番として、雇っても良いでしょうか」 「勿論良いわ、あの花が無ければ、回復薬は、作れ無いんでしょ」 「はい、花番の皆様も、新しい魔導士様に仕えられて、喜ぶと思います」
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