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やがて、薬が効いて来て、蕗の願いも届いたのか、ジョアンの
苦しい息は静まり、顔色も元に戻って、すうすうと眠り始めた。
「もう、大丈夫です」蕗がそう言うと、全員が、ほぅ~っと
安堵の溜息を洩らした。
シゼルが「街中でも、麻疹が流行っている様です、病院には、子供達が
大勢来ていました」と、さっき行った病院の様子を話す。
蕗は「では、私はこれで、夕方、また様子を見に来ます」と言うと
カルルに乗って、病院まで帰った。
シゼルが言った様に、病院には、麻疹に掛かった子供達が
赤い顔をして、母親に抱かれて、診察を待っていた。
「蕗様が、お戻りになられた」病院内に、喜びの声が上がる。
蕗は、さっそく診察室で、子供達の様子を見た。
比較的軽い症状の子には、回復薬を飲ませ、更に、回復薬を練り込んだ
キャンディを「一日、二個よ」と、言って渡す。
重症の子供には、種で作った回復薬を飲ませ、両手をかざして、回復を願う。
「蕗様、種の回復薬は、もう、二箱しか有りません」
ラフルが、そう言ったが「全部使ってでも、子供達を助けないと
種は、今年も採れます」と、蕗は言った。
黒いドラゴンが、花畑を荒らした所為で、今、使える種の回復薬は少なかった
あと二箱、これが無くなるまでに、麻疹が収まります様にと、蕗は願う。
緑の国だけでは無く、赤の国からも青の国からも
次々と、麻疹の子供達が、連れて来られていたからだ。
不眠不休で働いている、蕗の所へカラジがやって来て
「蕗様、ただいま戻りました」と言った。
「お疲れ様、丁度良かったわ、バナナは、病院へ運んで」
「はい」カラジは、馬車を飛ばして、港に行き、積み荷の中から
バナナが入っている箱を、馬車に積み、病院へ届ける。
蕗は、バナナを一本ずつ、入院している子供に食べさせた。
食欲が無かった子供達も、珍しい果物を喜んで食べる。
「これで、食欲も出る筈だわ」蕗は、そう言うと、バナナを一房持って
カラジの馬車で、王宮まで行き、まだ寝ているジョアンに
バナナを食べさせた「わぁ~面白い形、それに美味しいね~」
ジョアンは、大喜びで、バナナを、ぺろりと一本食べてしまった。
「これは、ダーナンの果物なんですね」ミリアが、そう言う。
「はい、ダーナンは、南にある国で、珍しい果物が、一杯有ります」
「じゃ、船を迎えに行った、父上も、これを食べたの?」
ジョアンがそう言う「もっと珍しい果物を、持って帰って下さるかも」
蕗がそう言うと「わぁ~楽しみだな~」ジョアンは、目を輝かせる。
「お元気になられましたら、ダーナンの、お話しをしてあげますからね」
蕗は、そう約束して、王宮から港へと向かった。
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