国交

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「皆さん、無事で良かった、お疲れ様でした」蕗が、ガノンを始め 乗組員全員に、労いの言葉を掛ける。 ガノンは「王様にお話しを聞きました、早く帰って良かったですね」と 蕗が、早く帰ったので、子供達の麻疹の手当てに、間に合った事を喜んだ。 そして「マーマを、病院へ持って行ったそうですね」と、言う。 マーマと言うのは、ダーナンの言葉でバナナの事だ。 「ええ、食欲が無かった子供も、マーマを喜んで食べてくれたの」 「良かったですね」結婚もしていないし、子供も居なかったが ガノンは、意外に子供好きだった。 「ジュレーム様」蕗は、ジュレームの傍に行くと スイカ位の大きさの、楕円形でトゲトゲの、確か、テレビで見た時は ジャックフルーツとか言っていたが ダーナンではホムムと言われる、大きな果物を見せ 「これを、ジョアン様に、持って帰って見せてあげて下さい」と、言った 「これはまた、珍しい、果物なのか?」「はい、中の実は食べられます」 「よし、誰か、これを持て」「はっ」お付きの者が、それを馬車に積む。 「ダーナンでの事は、ガノンとカラジにお聞きください。 私は、病院へ帰りますので」蕗がそう言うと ジュレームは「分かった、蕗の話は、後ほど、ゆっくり聞くとするよ。 今は、子供達の事を頼む」ジュレームはそう言った。 「蕗様、私も病院へ連れて行って下さい」ダーナンへ居る間 ずっと国中を歩きまわって、生物調査をしたダニエルは 腰も足も、うまく動かなくなったと言う。 蕗は、自分の馬車に乗せてやり「もう、お若くないのですから 研究を手伝ってくれる、若い人を傍に置いてはどうですか?」と、言った。 「全く、仰る通りです、今回の旅で、つくづくそう思わされました」 ダニエルは、そう言った後「蕗様、森の中で、カカオの実を見つけましたぞ」 と、興奮した顔で言う。 「カカオが?」蕗の頭に、とろりと溶ける、甘いチョコレートが浮かぶ。 「カカオ豆を炒った物は、香ばしくて体にも良いのですが 私が居た元の世界では、なかなか手に入らない、貴重な品でした。 私も、一粒だけ貰って食べた事が有ります」と、うっとりとした顔で言う。 「私が居た世界では、そのカカオで作った、チョコレートと言う物で 美味しいお菓子が、何百、何千種類も作られていました」と、蕗が言うと 「え~っ、何百、何千も?」ダニエルは、目を丸くした。 そして「そんなに沢山、カカオの木が有ったのですか?」と聞く。 「良く知らないのですが、麦や野菜の様に、森の中で栽培されていた様です」 「栽培?もしかしたら、ダーナンでも栽培できるかも知れませんね」 「そうですね、体に良い物ですから、沢山採れれば、ダーナンの人々の 新しい、産物になるかも知れませんね」蕗は、そう言った。
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