国交

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「そう言う事だ、では、どうすれば大量に生産されると思う?」 ダニエルが、皆に聞く。 「今は、小さく切ったキキを、へこんだ石の中に入れて 石斧で潰していますが、鉄製のローラーを使えば、簡単に絞る事が出来ます」 赤の国から来ている、留学生が言う。 「成程、良い考えじゃ、それなら労力はわずかで済む」ダニエルがそう言うと 「今は、ただ捨てている搾りかすも、堆肥にして活用できます」と 緑の国の留学生も言う。 皆は、改良出来そうな点を、あれこれ述べ、出来上がったばかりの 黒糖を、一欠けらずつ貰って「美味しいですね~」と、にこにこする。 一行は、今度は海辺に来た、波が寄せている岩の上で 何かを取っている女性が居た。 「あれは、何を取っているのですか?」早速、留学生が、ダニエルに聞く。 「ダーナンでは、ガジと言うが、蕗様の言葉では、海苔と言うらしい。 あれを醤油で煮こんだ物を、ダーナンの人は、ご飯の上に乗せて食べるが 蕗様は、それ以外にも、板海苔と言う物に加工すれば 我々の国まで持って来られる製品が出来ると、仰られていた」 それを聞いた、青の国の留学生が、傍まで行って見て 「我々の国にも、岩場は有りますが、傍に寄れない程、危険です。 その岩場には、確かに、この様な物も生えていますが 危険なので、誰も取ろうとは、思っていませんね」と、言った。 もう一人が「危険を冒して、こんな物を食べなくても 魚介類は豊富ですから」と、言う。 「だが、蕗様は、この海苔は体にも良く、海苔を使った料理は とても美味しいと、仰られていた」「本当ですか?」 「ああ、おにぎりに巻いて食べるのも、非情に美味しいそうだ」 「おにぎり、、」皆は、ここへ来る前日、蕗からの差し入れとして おにぎりを貰い、食べていた、あれが、更に美味しくなると言うのか。 「それでは、板海苔に加工する方法を、蕗様に、教えて頂きましょう」 さっきの青の国の留学生が、そう言った。 「そうじゃな、そうすれば、この国は豊かになり 我々は、美味しい物が食べられる」ダニエルも、嬉しそうに言う。 「午後からは、森に入ろう」留学生たちは、ダーナンの人が作ってくれた 昼食の珍しさと、美味しさを堪能して、一休みすると、森へと向かった。 「こんな深い森、我々の国には、無いものですね~」 皆は、天に届くかと思う様な、大きな木々や、珍しい草花に、見とれる。 「あっ、ホムムの木が有るっ」「凄いな~こんなに大きな実が、どっさりだ」 ホムムの木には、トゲトゲの大きな実が、沢山ぶら下がっていた。 その近くには、リナーと言う果物の木も有り、真っ赤に熟れた実を ガイド役の村人が取って、皆に一口ずつ食べさせる。 「うわ~っ、美味しい!!」「甘いですね~」「良い香り~」 皆は、その美味しさの虜になった。 「しまったな~こんな美味しい物が有るなら お昼ご飯、軽めに食べれば良かった」昼食を、人一倍食べた 食いしん坊らしい一人が、そう言ったので、皆は「本当にそうだね」と笑う。
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