国交

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「おっ、有った、有った、この実じゃ」ダニエルは また、変わった実が付いている木を見つけて、喜んだ。 「この実は、ジグと言って、ダーナンの人は食べないらしいが わしと、蕗様はカカオと呼ぶ、貴重な実なんじゃ」 「カカオですか?」「何故、食べないんですか?」一人の学生が ガイドに聞く「こんな、不味い物を食べなくても、美味しい果物は いくらでも有るからです」ガイドは、笑いながら言った。 「そんなに不味いのですか?」「不味いと言うより、苦いんだ」 ダニエルはそう言うと、良く熟れている実を割って 中の種を取り出すようにと命じ、その種は、ガイドが持っていた 手提げ袋、一杯に採れた。 「先生、今まで来た所には、この木は無かったですね、ここらにしか 生えないんでしょうか?」一人の学生が聞く。 「良い所に気が付いた、蕗様の話では、この木は、大きな木の下でしか 育たないそうだ、だから、この一帯にしか無いんだ」 「蕗様って、何でもご存知なんですね~」と、緑の国の留学生が言い 「あんなに、お若いのに驚きます」と、青の国の、留学生も言う。 皆は、うんうんと頷く「前の世界で、色々な事を学んだんじゃろう だが、蕗様は、こうおっしゃられた、私の知識など、ほんの僅かな物 でも、それが、皆様のお役に立てるなら、こんな嬉しい事は無いとな」 「あれで、僅か、、」蕗の活躍を知る皆は、蕗への尊敬を、更に深めた。 お互いの国の留学生は、その国の良い所も、悪い所も しっかりと学んで行った。 ダニエルは、暫くダーナンで暮らすと言って、カカオを、蕗に届けさせた。 蕗は、それをデルフの所へ持って行き、これを炒って、中身を取り出して 砂糖と混ぜてくれと頼んだ。 暫くすると「こんな物が出来ましたが、、」と、デルフは 鍋ごと持って来て、蕗に見せる。 とろとろの、チョコレートソースが出来ていた。 「かなり、砂糖を入れたのですが、まだまだ苦いです」デルフは、困っていた 「有難う」蕗は、傍に有ったクッキーに、それを付けて食べ 「美味しい!!ちゃんとチョコレートになってる」と、喜んだ。 「これは、パンやお菓子に、ソースとして、掛けて食べる物なんですね」 デルフがそう言う。 「それでも良いけど、冷ますと形に出来るわ、それを、キャンディみたいに 紙に包むと、お菓子として食べられるの」「分かりました」 デルフは、蕗に言われた通り、冷たい大理石の上で、冷やした物を 一口大の丸い形にして、キャンディを包む紙で、包んだ。 「蕗様、出来ました」「有難う、これを食べたら、王様も驚くでしょうね」 蕗は、そう言うと、チョコレートを持って、王宮へ往診に出掛けた。 レイモンドとマーラが、嗅ぎ慣れない香りに、厨房を覗きに来て 「いったい、何を作ったの?」と、聞く。 「チョコレートと、言う物です」デルフはそう言って 鍋にくっついている物を、こそげ取って、二人に食べさせた。 「むむっ、苦いな」「でも、甘さも感じます」そう言う二人に 「不思議な色と、香りでしょう」と、デルフが言う。 「何だか癖になる味だな」「ええ、私は、好きです」 「お茶が、欲しいですね」二人がそう言う前に、デルフが、紅茶を置いた。
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