小さな嫉妬

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 夜、子ども達を寝かせた後、玲はひさしぶりに自分の時間に没頭していた。  双子の育児は体力がいる。いつもは寝かしつけながら自分も寝てしまうのだが、今夜は眠くなる前に子ども達が寝てしまった。  きっと夕方、興奮し過ぎたのだ。遊んでくれる楽しい人が来てくれたおかげだ。  梓にお風呂に入れてもらった後、秒で寝てしまったおかげで、玲は今こうしてゆっくりと本を読んでいる。  梓は少し仕事をすると言って書斎にいる。  外出を極力減らし、育児を手伝う傍ら、梓はその分夜遅くまで仕事をすることが増えた。  身体の心配をする玲だが、その分子ども達との時間は取れているので問題ないと梓は笑う。  今のところ特に引っかかる数値もない。  玲は意識を本に向けて、ベッドに横になりながら読んでいた。  そこへ、夜も十時を過ぎた頃。  梓がベッドにやって来た。まだ、二人の時は十時など、ゆっくりテレビを見ていた時間だった。だが、生活リズムが変わり、子どものいる家庭で夜十時というのは随分遅く感じる。  玲はそんなことを思いながらも、背中から感じる温もりに少しだけ頬を緩ませた。  梓は何も言わない。言わないが、玲を背中から抱きしめると、長い腕を玲のウエスト部分に差し込んでしっかりと抱きしめてしまう。  脚を絡めて、甘えるように玲の肩におでこをこすりつけた。    会社の代表という顔を持ち、また、双子の父親という役割もある。だけど、彼の根本的な性質は末っ子気質の甘えただ。  昔ほど自由に甘えられなくなった分、こうして玲がひとりの時間を楽しんでいると、すぐに尻尾をふりながら「くぅーん」と甘えてくる。  
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