2664人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
玄関でガチャリと施錠の音が聞こえた。
彼女の気配を感じてソファーから飛び降りると、扉の隙間に身体を捻じ込んだ。
スルリとすり抜けた身体が軽やかにフローリングを蹴る。
玄関のマットの上にちょこんと腰を下ろせば、わずかに開いた扉から大好きな彼女が顔を覗かせた。
「アズキー、ただいまあ。今日も疲れたよう」
彼女の名前は宮内玲。
俺の大大大好きなオンナだ。
「にゃあん」
(おかえり。おつかれ)
玲は俺を見ると嬉しそうに笑ってよしよしと頭を撫でてくれる。
今日も一日大人しく待っていたんだから、と甘えるように飛びつけば「はいはい」と抱き上げて頬ずりしてくれた。
「アズキは可愛いねえ」
俺はカッコいいがいいんだけど。
まあ、いいや。
玲が愛してくれるならなんでも。
「にゃあん」
(玲、愛してる)
ぺろっと頬を舐めれば玲はくすぐったい、と笑う。
俺にとって玲の笑顔が全て。
だから、たとえ可愛いと言われようが、仕事で一日放置されようが、こうやって傍にいる時は俺を見てくれるならよかった。
それだけでよかったのに。
最初のコメントを投稿しよう!