もしも梓が猫だったら

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 「お。めちゃくちゃうまそうやな」  「わかったから、手洗ってきぃ」  「はいはい」  ある日突然玲が男を連れてきた。  話を聞く限り、まだ付き合ってはないらしい。  ただ、その男は玲に気があると思っている。  玲がこの男を家に呼んだ理由は「アズキのご飯が遅くなるから」と嬉しいやら悲しいやらで複雑だった。  「アズキ〜。おいで」  「…にゃあん」  リビングの隅っこにある、キャットタワーの一番上で二人を観察していると、玲が俺を呼んだ。  一応、怒っているんだぞ、と示しているつもりなのに彼女に呼ばれただけで勝手にしっぽが揺れてしまう。  「ふーん。アズキっていうんか、お前」  こいつに名前を呼ばれただけでテンションがだだ下がる。  俺はそいつをスルーして伏せると手のひらをぺろぺろと舐め始めた。
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