もしも梓が猫だったら

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 だが、食事が始まると二人の距離が非常に近くなった。まずは観察、と大人しくしていたのに、ただ黙って眺めていることがとても馬鹿らしくなってきた。  俺はどうやって邪魔してやろうかと考えながらとりあえず地面に降りる。    「にゃあ〜ん」  「あら、アズキきたの?」  「ふにゃあん」  男と二人並ぶ玲の間に身体を滑り込ませて玲に甘えるように膝に乗る。  「にゃあ、にゃあん」  (こいついつ帰るの?)  「なに?お腹すいたの?」  違う、と言っても玲はのほほんと笑いながら「アズキは可愛いねえ」と撫でられるだけ。  これは、言わなきゃわかんねーな、と諦めた俺はあからさまに男に向かって威嚇した。  「フーッ」  「こら!アズキ!」  「にゃ」  ふん、嫌い。  こいつ、すげー嫌い。  「ごめんね、壱」  「いや、かまへん。猫って気まぐれやし。内弁慶?やろ」  「まあ、そうね。でも未玖にはそれほどでもないのよね」  「今日初めましてやし、しゃーないんちゃう」  玲はごめんね、と男に謝る。  俺は何故謝るんだ、と玲の手をてしてししたけど、男が笑いながら「おー、猫パンチ!」と言ったから慌てて手を引っ込めた。  
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