もしも梓が猫だったら

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 「アーズーキー。もう拗ねないで」  あの後、俺はあの男を完全に無視して玲に甘え続けた。話をしようとすれば彼女の口を舐め、指を甘え噛みし、膝の上で丸くなった。  男と仲良くできないことをしめしめとほくそ笑んでいると、玲に邪魔だと抱き上げられて寝室に閉じ込められてしまった。  まさか玲が裏切るとは思ってなかった俺は愕然としたあと、すごく悲しくなり、ベッドの下に潜り込んだ。  玲の馬鹿ーー  浮気者ーー  ひとしきりにゃあにゃあ泣いて、気が済んだら玲が部屋にやってきた。  どうやらあいつはもう帰ったらしい。  でも、俺は許せなくて、ベッドの下に潜り込んだまま。  いつもなら玲とゆっくりごろごろできる時間なのに邪魔されて、邪魔者扱いまでされて、俺は許したくてもしばらくは許せそうになかった。  「アーズーキ。はぁ。もう、知らない」  玲がまた部屋を出て行く。  俺はその姿を見送って、やっと隙間から抜け出した。  玲の馬鹿。  ふん。      
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