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入場門では少し緊張気味の椿と友達と少しふざけている環がいた。環は「たまちゃんのままいるよ」と言われて照れている。
玲と梓と二人並んでいる姿を見た環は嬉し恥ずかしい気持ちで胸がいっぱいだった。
毎日会ってるのに「へんなの」と思う。
「あ、たまだ。がんばれー」
そんな息子の気持ちをよそに玲は呑気に小さく手を振った。隣に立つ梓が玲に昨年のことを訊ねる。
「去年何位だったっけ」
「ふたりとも二位よ」
そうか、と梓が一息ついた時。
「つばき、がんばれええ!!たまちゃんもーー!!がんばってえええ」
まるで、己を鼓舞するような腹の底から湧き上がるパッションを言葉に乗せた沙菜は椅子に立ち上がりぴょこんと頭ひとつ飛び出した顔をしわくちゃにして叫んでいた。
「たまちゃーん!ちゅばきーー!!」
よく通る透き通ったかわいらしい声が息子達をくりかえし呼ぶ。
若干噛んでしまったのはご愛嬌。小さな応援団長が二人に声援を送る。
一方、その両親はというと、
彼らはピキッと硬直し、すぐに遠い目になった。慌てて九条夫妻に頭を下げる。
沙菜はすぐに先生に椅子から降りるように注意を受けていた。
だが「抜け駆け禁止」と、それに負けじと、椿と環を知る女の子たちから黄色い声援が飛び交う。
「オーオー。人気者だネェ」
凌がヒューッと口笛を吹く。
梓と玲は二人顔を見合わせると呆れたように肩を竦める。
椿はぎこちなく笑い、環は沙菜に軽く手を振ってその場を凌いだ。
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