もしも梓が猫だったら

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 その夜、玲が寝たのを見計らって俺はベッドに潜り込んだ。  ひとりで寝るつもりだったけど、なんだか寂しくなったのだ。  玲の温もりがない。可愛い寝顔も見えない。  柔らかい匂いも優しい空気もない。  心が満たされない。  ……玲、俺だけを見てよ。  すぅすぅ呑気に寝ている玲の唇にチョンと鼻をぶつける。ぺろっと舌で舐めると玲が「んんん」と顔を背けた。  玲は俺のだからな。  玲が寝ているのをいいことに一生懸命頭を擦りつけた。  それに夢中になってた俺は伸びてきた手に捕まってぎゅっと抱きしめられてしまった。  ……うう。くそ、くそ、くそ。  どうして俺は猫なんだ。  言葉も通じないし、好きな女を抱きしめることができない。  情けない、情けない、情けない。  「……ふへへ、アズキ」  玲は「アズキはいいねぇ」っていうけれど、俺は……今度生まれ変わるなら。  人間になりたい。  
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