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白熱した年少組のプログラムが終わった後、次のプログラムに参加する入場者に会場が騒めいた。
アップテンポの今年流行った音楽に合わせて行進する子どもと保護者たち。手を繋ぎ嬉しそうに歩く子どもたちもいる中、一際目立つ男性に目が惹く。
その隣には瓜二つの男の子。何か話しかけているのか父親を見上げており、父親はその話しに耳を傾けているようだった。
「お。今年は環と梓か」
「環、思ったより元気そうだナー」
「椿はちょっと照れくさいか」
椿は玲と手を繋いで行進している。
ちょっとばかし照れているように見えるが、ただ、嬉しいだけ。
甘えん坊の環は素直に玲に甘えることができるけど、椿はいつも譲ってしまうのだ。
そんな椿がちゃんと甘えられるように夫妻は気をつけている。今日のペアも予め二人の中で決まっていたが、環のかけっこでのこともあり、玲と組んだ方がいいのでは、と直前まで考えていた。
だが、環が『パパと!』と言い出した。
本人も去年のことは覚えていたらしい。
ちなみに去年は、梓と椿がいるチームが勝った。個人戦ではなくチーム線。今年はどうなるかわからない。
それでも環が言うのだ。椿はてっきり自分が父とチームだと思っていたので驚いた。
でも、いい。
どっちもだいすきだから。
椿は小さな手をきゅっと握り締める。
それに気づいた玲は前を向いて歩く椿に優しい眼差しを向けた。
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