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「ぱぱー!さな、ままとがんばったよーっ」
親子競技が終わり、お昼休憩に入った。
沙菜は自分そっくりな男性を見つけると嬉しそうに駆け寄っていく。
「速かったなあ。ママと息ぴったりだった」
「だってれんしゅーしたもん!」
沙菜は父親の手を握ると嬉しそうに見あげて笑った。綾乃との練習は雅も一部始終を見ている。
綾乃が少しだけ難しいことを娘に言っていたのは知っているが娘は娘なりに理解したらしい。
「ぼーる、まっすぐとんだから、こーんもさいたんきょりでまわれたよ」
沙菜が握った手をぶらぶらさせる。
雅は一瞬遠い目になりながらテントで愚図る咲茉を抱っこしてあやしている妻を見つめた。
最短距離、という言葉を発する四歳児……。
「…よかったじゃん」
「うん!あ!さな、おなかすいたー!」
「お弁当食べような」
沙菜は元気よく頷くと雅の手を離し「よーいどん!」とひとりかけっこを始めた。
一目散にかけてゆく娘の小さな背中を見て雅は苦笑する。揺れるポニーテールに肩を竦めながら、娘を追い越さない程度に足を速めた。
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