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沙菜はとてもワクワクしていた。
かけっこは一番だったし、親子競技もママと楽しく走って勝った。すずわりは残念ながら負けてしまったけれど、来年頑張ればいいのだ。
そして、朝から楽しみにしていたお弁当。
大好きなお稲荷さんはパパが作ってくれたもの。
蓋をパカっと開けて「わっ」と小さく叫んだ。
沙菜の小さなお弁当は大好きなお稲荷さんでぎゅうぎゅうだった。
嬉しくて顔をあげれば、椿と環、そして怜空たちもお弁当を食べる準備をしている。
「沙菜、ママちょっと先生たちに呼ばれたから行ってくるね」
綾乃はテントを出ると玲と連れ立って職員達のいるテントに向かう。綾乃がいなくなったことで、眠いしお腹が減ってご機嫌斜めな咲茉が泣き出した。雅は宥めながら咲茉を抱き上げて立ち上がってしまう。
「沙菜、ちょっとパパ咲茉見てるから。怜空と椿と環と待ってて。未玖ちゃん」
雅は沙菜に言い付けると、未玖に呼びかけた。
未玖は「はいはい」と軽く頷くとぽつんと座っている沙菜に笑いかける。
「沙菜ちゃんもこっちおいで。皆でご飯食べよう。ね」
沙菜はちょっとだけ気持ちが落ち込んだ。
沙菜、たくさん頑張ったのに。と不貞腐れそうになったのだ。
せっかくパパが作ってくれたお弁当だ。
皆で「おいしいね。楽しいね。沙菜頑張ったね」と言って食べたかった。
萎えかかった気持ちだった。だが、未玖が笑いかけてくれたから沙菜はちょっとだけ気持ちが浮上する。
「さな、りっくんとつーとたまとたべる!」
沙菜は自慢のお弁当箱を持つと未玖に誘われるまま移動した。蓋が空いたお弁当をひっくり返さないように注意しながら。
すると、怜空の父親が、椿と環の父親が沙菜を見て何故か笑うのだった。
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