ジュードとマッチ売りまくりの少女

1/11
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 明かりのない村があった。空に限りなく近いところにあり、割れたガラス瓶のような岩肌を剝き出しにする山々が四方を囲っていた。  明かりがないので夜は暗闇だった。昼は凍えるように寒く、夜はもっと痛いくらいに寒かった。毛皮でできたコートをまとっても、夜はさらに堪えた。  白く吐く息が、その色を失うくらいには何も見えない。この村には火があったが、成人した者が屋内で扱うことしかできなかった。だからまだ16になっていないジュードには、その温もりを操る資格がなかった。  しかしジュードは火の持つ明るさの魔力に魅せられ、こっそりと暖炉から種火を持ち出して自分の部屋に持ち帰ろうとした。 「何をしている?!」  振り返ると父が立っていた。 「ジュード。お前はまだ火に触れてはいけない年齢のはずだ」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!