餡蜜は女優になりたい【短】

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周りの友人が大学へ進学する中、演技を学ぶ専門学校へ入った。 “国立大学合格者189名!その他有名私立大64名” そんな業績をアピールする高校のホームページの端っこに小さく、私が入学した専門学校の名前があった。 「大学行きながらでも演劇はできるじゃん!」 「せっかく県内有数の進学校に入ったのに、もったいないよ」 「専門行っちゃったら、夢が変わった時に他の道がなくなるよ?」 周りは全員反対していたけど、私は夢が変わらない自信があったし、大学で勉強しながら片手間に演劇をやるような過ごし方は嫌だった。 オーディション帰りにスーパーへ寄り、晩ご飯の食材と、デザートのあんみつを買う。 ラッキー、キャベツ1玉118円か。 今日はこれを焼肉のタレで炒めてご飯に乗せて食べよう。 肉の無い晩ご飯も、お金の無い生活も、今だけだから。 有名な女優になったら、ゲストとして呼ばれたバラエティ番組で「実は若い頃はキャベツをおかずにご飯を食べるほど貧しくて…」と話そう。 「ええーっ!?嘘でしょー!」って司会のお笑い芸人につっこまれる未来が見えた。 「オーディション終わりは毎回、あんみつを買っていたんです」 「有名女優なのに渋いな〜。よし、これから”あんみつのみっちゃん”、略して”あんみっちゃん”って呼ぶわ」 放送直後は全国のスーパーやコンビニからあんみつが消えるだろう。 そんな未来を想像すると、まだ頑張れる。
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