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通称:キャット君
監視カメラを見上げる、目つきに悪い青年が一人。監視カメラの先にいる貴方が本当に存在しているかもわからないまま、その存在に縋る。寧ろ、貴方の存在が曖昧な故に縋りたくなるのだろう。
一切の整いがない黒髪、細々とした身体。そして、やはり目。貴方が最初に気になったその鋭い目つき。まるで、食事中の犬のような。取られまいと飼い主だろうと睨み付けるあの、本能を見せ付ける攻撃的な瞳。
それでも、貴方にはわかるだろう。胸の前に祈るように両手を握りしめた彼の姿。彼が今貴方を襲おうと睨めつけているわけではないこと。貴方を恐れているわけではないこと。
「ココロって、なんでしょうか?」
キャット君はそう、和紙に垂らした墨汁のような。そういう染み入るような声音で貴方に聞きます。
「こんな機械的な日々を送るのに、なんでココロが必要なのでしょうか。食事を取り、子を持ち、死にゆく。それが人生ならば、このココロは一体全体、なんのために存在するのでしょうか? 機会のようにプログラムだけで、生きていけないのでしょうか?」
ーーココロがいらない。ニンゲンでなくてもいい。いっそ、ニンゲンの皮を被った怪物でいたい。
「・・・・・・。はぁ。何をやっているんだろうか」
キャット君は疲れた顔で部屋を出て行きます。しかし、ドアから出る直前にそっと視線をカメラに向けます。
「もし、本当に聞いているなら。どうか、明日には忘れてくれませんか?」
そうして、彼はドアを閉めて、部屋の電気を消した。部屋の中に再び暗闇に満ちた。
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