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まるでドラマのように
「今度は私のこと、覚えてますよね?」
微かな異臭に怯えながら顔をあげた僕の目の前に土気色の中年女性が立っていた。
「まさか……」
「私が30センチ級になるまでお兄さん待ってられないみたいなんで、やっぱり今のうちにご恩返ししとかなきゃと思いまして!
高校生はあまり好みじゃなかったみたいだから、今回は熟女を選んできましたよ」
「う、うそだろ?」
「今回はお兄さん探すのに時間かかってないから、まだ状態も良いでしょ?」
唖然とする僕の前で、緑藻はクルッと一回転してみせる。
水の滴る黒髪がベットリと生気のない顔に張り付いている。
人型を保っている分、正直ゾンビより怖い。
「水の中で見たときはツイン・ピークスのローラみたいで、結構美人さんだったんですけどね。どうですか?好みじゃないですか?」
「何で緑藻がツイン・ピークス知ってるんだよ……」
僕は『投げっぱなしの謎や意味不明な描写だらけ』と酷評の高い海外ドラマ、ツイン・ピークスを思い返す。
酷評の裏でその人気は世界各国に社会現象を巻き起こした伝説のドラマだ。
「デビット・リンチ監督の作品はなぜかクセになるんだよな」
なんだか憎めない緑藻との再会に、僕はクスッと笑ってそう呟いた。
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