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或る所
カツ……カツ……カツ…「トマレ」カチャ、ギィ~、カツ、カツ、「スワレ」ドサッ「いてっ」グルグル…キュ、カツ、カツ、バタン、カチャ。
「おい、大丈夫か?」
「あぁ、平気だ」
何処かに閉じ込められた二人がまた再会した。
「お前が連れていかれた時点で終わったと思ったよ」
元々室内に居た背もたれのついた木製の椅子に括られた飯沼俊一の安堵した言葉に、
「おぅ、俺も殺されるのかもってビビった」と答えた高村和典。
続けて「見てみろこの顔、真っ青だろ」と飯沼に数ヵ所殴られた顔を向けると、これに、
「見えねぇよ、目隠しされてんだから」と食い気味に反論。
「だよな、俺もおまえの顔見れねぇ」
高村の気持ちにやけたトーンの言葉を聞いた飯沼は、
「左っ側から声がするからソコに居るのは分かっけど」
と呆れ声で返す。
「あの下っ端の野郎、ケツ蹴られて痛ぇのに思いっ切り座らせやがった」
高村の嘆きを受けて、
「次はこっちか」とため息交じりの飯沼。
「ここドコだろうな」
「わかんねぇ」
拉致られた人物が自分達の居所が判明するヒントをそう簡単に得られる訳がない。
「何で入れ替わりでシュン連れてかれないんだろ」
「知らねぇ」
「メシ食わしてくれんのかな」
「どうかな」
「便所は?」
「言えばさせてくれんじゃね?」
自らでは解決しない会話を行う二人。
「ご丁寧に視界を奪いやがって」
高村の怒りを露わにした言葉に飯沼は何の足しになるのか、
「この質感はバンダナ類の布地だ」と材質を述べる。
更に、
「だが下半身までは拘束されてないのは少し気が楽だ」
と足踏みを2度して強がったが、
「ま、椅子ごと歩けた所で前が見えなきゃ意味ねぇな」
と今度は落ち込んだ。
少しの間を置き「あ、あ、あ」と空間に感情を込めない発声をした飯沼は、自分達の置かれた環境を冷静に分析し始める。
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