ウロボロスの秘儀

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 二人が会議室へ戻ると、中村の家に事情聴取に行っていた沢渡美由と根津当麻も帰っていた。  中村和成。  印刷会社に勤め、そろそろ結婚という話も出ていて、今まで普通に一生懸命生きてきた男だった。  話の最後に、根津が髭面を撫でながら付け足した。 「中村さん、副島総合病院で生まれてます。担当医は佐久。……ずっと子供ができなくて、不妊治療でやっと授かった、と」  中学生の男の子がいる沢渡が、ふっと母親の顔になる。「ひとり息子だった。なのに、こんな」  山藤が遠慮がちに野田に尋ねた。「お前、どこの病院で生まれた?」  急に聞かれて、野田は気のない返事をした。「さあ」  その答えに沢渡が「え?」と小さく呟く。  野田は、自分の生まれへの無関心を責められた気がして、慌てて言った。「あ、このあと実家に電話して聞きます」 「まあ……急がなくて、いい。一旦解散」  山藤は歯切れの悪い言い方で、その場を締めくくった。
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