暗やみのなかで浮かび上がったそれをおれは忘れない

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「おまえ、ちったあ勉強しろよ。じぶんの国のこともわかっちゃねえなんてわしらより無学だぞ」  暴利をぶっかける奴に言われたくなかったが、おれはぐっとこらえた。 「メ、というのはな、いろんな意味がある。学者先生の言ってるもの以外の意味もある。かつての人々はその存在をどこでも感じられる、当然のものとして感じていたんだとわしは思っている。わしはあの身の毛のよだつ目は、布告と洗浄、つまり容赦なく処分するぞってこったろうと直感したんだ。まちがいねえ、長年盗掘やって喰ってきた勘だ」  眩暈がした。 「盗掘と店やってるのに、なんでそんなに詳しいんだ。そんだけ熱心ならほかの仕事だってできるだろうに」  けっ、と店主はせせら笑った。 「アホ抜かせ。おれたち国の者が盗掘しなかったら、他所者が掘り返しておれたちにびた一文も払わず持って帰っちまうんだぞ。同じ盗掘するならわしらに権利があろうだろが」  店主の理屈に、おれはうなるしかなかった。
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