暗やみのなかで浮かび上がったそれをおれは忘れない

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「向かう先は、古代遺跡だ。そこのお宝を頂戴する」  突拍子もない話に、おれは面食らった。 「遺跡って、なんの?」 「知らねえよ。大昔のもんなんだからそれでいいじゃねえか」 「なんでそんなものがあるってわかったの」  店主は舌打ちした。 「なんでもいいだろ。とにかく、お宝を見つけて持って帰ってそれを売る。それがあの町の大方の奴らの食い扶持なんだよ」 「ぼくたちの分け前ってどのくらい?」  おれをぐいと横に押し、テオが身を乗り出してきた。 「わしが許可した分だけな」 「ええ? いろつけてよ」 「お宝の量次第だ。これ以上うるさくするなら砂漠に放り出してやる」  言われて窓外に目を向けると、あたり一面、夕日の色に染まった砂の荒野が広がっていた。  中古のバンは大きくガタガタとゆれながら、道なき道を走っていった。  店主は何の目印もない砂漠を何時間も迷いなく進んでいった。おれは夕暮れから夜に変わる景色を眺めながら、これをひとりで引き返せと言われても無理な話だな、などと考えていた。  夜空に星が現れてしばらく経った頃、バンがようやく止まった。 「降りろ」  降りた目の前に、大きな岩がそびえ立っていた。 「こっちだ」  岩の中央に、言われなければわからないほどの小さなくぼみがあった。  それに手をかけてガタガタと揺するように動かすと、周りの砂がはらはらと落ちていき、高さがおれの胸ほどの、金属の扉が現れた。おれたちは店主を先頭にその中へ入っていった。  人が一人ようやく通れるほどの通路だった。うねうねとした道を店主の懐中電灯を頼りに進んでいくと、また扉が現れた。  金属の扉の中央に、なにやら一本の線が入っていた。 「これを開けろ」  扉の中央に、入ってきた時と同じようなくぼみが線を対称にして二つあった。おれはそれに両指をかけ、左右にスライドさせようとしたが。びくともしなかった。 「やっぱりだめか」  店主はポケットからナイフを取り出した。
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