黄色い彼女

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 「ねぇ、覚えてる? 僕の大事な彼女の事を。 艶のある茶色い頭で、身体ををぷるぷる震わせる、黄色いあの子を」  僕は、リビングのソファーで座っている兄に聞いた。兄は不思議そうに僕を見ていた。僕は更に兄に近付いて続けた。  「僕は、彼女と一つになるはずだったんだ。そのために今日の夜、丁度彼女のような黄色い満月の日まで僕は大事にしてたのに……それを靖兄(やすにい)は、勝手に彼女と一つに……。この残骸が何よりの証拠じゃないか!」 と、目の前のテーブルに置いてある彼女の残骸、空になった透明で大きめのカップを指差した。兄は笑って僕の頭を軽く叩いて詫びた。それでも怒りが収まらない僕は、さらに続けた。  「いや、また買ってくるからってそういう問題じゃないんだよ……えっ、代わりの黄色いもの? いや、僕は他のじゃだっ……」 兄は残骸の隣にあった黄色いものをスプーンですくって僕の口にねじこんだ。  「……美味しい」  僕は黄色いものの入ったカップの蓋を見た。『黄桃ゼリー』と書いてあった。僕はその夜、彼女と一つになった。  「ごめんね。悪気はなかったんだけど、浮気しちゃった。今度はちゃんと君と一緒になるからね。いつもの三つ子のじゃなくて、ちょっと大きい一つだけの君を。だから、また今度ね、プリンちゃん」  僕は彼女にそう詫びながら、彼女の残骸を青い袋に捨てた。
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