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僕は少し遠慮がちに言う。
「本当? それなら助かるよ。ありがとう」
「全然いいよ。その話を聞いて一人で歩いて帰らせるわけにもいかないしね。その代わり、今度なんかしてくれよ」
雨はまだ止みそうにない。むしろ先程よりも勢いを増しているように感じる。
二人で迎えを待っている間、僕はふとよっしーの持っている体操服を見て、教室に体操服が置きっぱなしだったことに気が付いた。
「ごめんよっしー、教室に忘れ物したみたいだから取ってくる。時間、大丈夫?」
「おっけー。全然大丈夫。俺も行こうか?」
「いや、いいよ、悪いし。すぐ戻ってくるから、待ってて」
窓を打つ雨音と跳ね返ってくる自分の足音を置き去りにして、急いで教室へと向かった。廊下を走って教室へと向かい、息を整えながら扉を開けると、教室の隅の席で一人座っている静がいた。
扉を開けた音で静もこちらに気づき、目が合った。
「こんなところで何してんの?」
「読書。皆帰っちゃったからこっちで読んでるの」
「こんな暗い中で読める?」
「まあ……読めるかな」
「ていうか、本とか読むんだね。知らなかった」
「うん、結構読むし、面白いよ。渡は本とか読んだりしないの?」
「読まないな。本を読むくらいなら漫画読んだ方が面白い」
「そうなんだ。渡、馬鹿っぽいから本とか読めなさそうだしね」
「それもあるね」
僕がそう言うと静から笑いが漏れた。それにつられて僕も笑う。こうやって静と笑いあったのはいつぶりだろうか。すごく久しぶりな気がする。
「こんな風に話すの久しぶりな感じがするね」
僕の思っていることと同じようなことを静も話した。
「タイミングがあんまりなかったからね」
「そうだよね。ところで、渡は教室に何しに来たの?」
「忘れ物だよ。体育館でよっしー待たせて、体操服取りに来た」
「だからそんなに息が切れているのね」
「そうそう、そういうこと」
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