闇がりと後悔

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「お母さんが家のお金をたくさんギャンブルで使ったんだって。だから、お父さんとお母さんが離婚するって。お父さんの方に付いていくことになると思うんだけど、そうなると詳しい事情は分からないけど、引っ越す必要があるらしい。友達には引っ越しのこと話しづらくて話してないんだけど、渡には伝えようと思って……」  雷鳴が轟き、雷光が教室に差し込む。暗闇の中で静の表情ははっきりとは見えなかったが、雷光が一瞬だけ彼女の顔を照らした。彼女は……泣いているように見えた。 「それで、渡に伝えておかないといけないことが他にもあって……言葉にする自信がなかったから、これを読んで欲しい」  静は自分の鞄から手紙を取り出して、僕の方に差し出した。僕がそれを受け取ると彼女は言葉を続けた。 「今日、偶然停電が起きてよかった。今、私がどんな顔なのか渡に見られないからね。話したかったことも話せてよかった。それじゃあ、また、月曜日会おうね。またね」  そう言うと、彼女は足早に教室から出ていった。  近いうちに会えなくなるかもしれないのに……またね、か。こんなことになるのなら、もっと静と話しておけばよかった。  僕は貰った手紙を丁寧にポケットにしまい、教室を出た。  体育館に着くと、よっしーが僕に話かけてきた。 「遅かったな、渡。体操服探すのに時間かかったのか? てか、大丈夫か? なんかあったか?」 「大丈夫って? 何が?」 「何がって……渡、すげえ辛そうな顔してるぞ」  その後よっしーの母親の車に乗せてもらい、僕は家に帰ると、すぐに手紙を読んだ。  その内容はラブレターだった。僕への気持ちが綴られている一方で、引っ越しのために静自身が自分の気持ちを伝えようか迷っていたというような葛藤も感じられた。  それでも、僕はこの手紙を貰えて、静の気持ちを知ることができて嬉しかった。
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