ケース7️⃣ 前世追憶

10/76
前へ
/76ページ
次へ
一つ溜息をついたサミュエル氏の顔は、蒼白く見える。 「一人は私の実の娘、ベティ。もう一人は従姉のアビゲイル。両親を亡くした彼女を、今は私たちが引き取って一緒に暮らしている。」 ベティ・パリス。9歳。 アビゲイル・ウィリアムズ。11歳。 一同黙って聞いている中で、サミュエル氏が話しを続けた。 「昨日の夕方、1月20日。突然、ベティとアビゲイルが、二人とも発作のような症状を起こしたのだ。私は何か、痙攣発作かと思っていた。」 「痙攣発作?」 星読み先生が呟く。 するとサミュエル氏は、先客の男性を見ながら紹介してくれた。 「彼は、このセイラム村の元牧師、ディオーダット・ローソンさん。私たち家族とは、牧師関係という繋がりもあり、付き合いのある方だ。その時も彼がうちに来ていて、私はほんの少し所用で近所へ出掛けていた。彼は娘たちの発作を、最初に目撃した人物なんだ。」 ディオーダット・ローソン。 サミュエル氏と同じく、上下黒の衣服をまとい、細身体型の男性であった。 紹介されてローソン氏は、改めて頭を下げる。 「良かったら、彼からその時の状況を聞いてみてくれ。」 サミュエル氏が、話の続きをローソン氏へと託した。 それを察して、ローソン氏が話しはじめる。 「あ・・。私は、サミュエルさんが所用から帰ってくるのをこの家で待っていました。すると突然、ベティとアビゲイルが痙攣のような発作をしはじめたんです。思わぬ出来事に、どうして良いか分かりませんでした・・。」 星読み先生は、真剣な表情で尋ねた。 「その時の状況を、もう少し詳しく教えて頂けますか?」 そう言われてローソン氏は、少し怯えた様子で話を続ける。 「彼女たちは、腕を激しくバタつかせ、部屋中を走り回り、椅子の下で泳ぐ仕草をしたり・・・。そこの煙突にも登ろうとしていました。あと・・アビゲイルの方は、体が明らかに人間ではない不可能な位置に曲がったりしました。今、思い出しても恐ろしい光景です。」 話した後も、自らの口を押さえたまま、体を震わせているローソン。 「分かりました。ありがとうございました。」 星読み先生は、軽く頭を下げた。 やがて心身喪失の状態で、ローソン氏は帰っていく。 星読み先生は、サミュエル氏に告げた。 「今回の件、娘さんたちの体も心配ですし。先程のローソンさんの話では、只事ではないような気がします。一日二日で解決しないようなら、この村の宿屋に泊まったり、ボストンに戻ったりして行き来させてもらいたいと思います。」 サミュエル氏は、星読み先生の両手を掴んで言う。 「私の娘の件で・・有難いです。私も娘たちが心配でたまりません。もし良ければ、ボストンとの行き来も大変でしょうし、宿代もかかります。うちに、しばらく泊まっていってください。部屋はありますから。」 「サミュエルさん。ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます。」
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加