ケース7️⃣ 前世追憶

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その『白魔法』の方法とは・・。 ライ麦粉に、ベティとアビゲイルの尿を混合して作った『魔女ケーキ』を犬に与える、というものだった。 そして出来上がった『魔女ケーキ』を野良犬に食べさせてみる。 サミュエル氏とその一家、隣人の者たちが見ている中で、執り行われた。 星読み先生とメイドも、この検証に立ち合う。 美味しそうに、『魔女ケーキ』を食べ尽くした野良犬。 すると突然、野良犬の様子がおかしくなった。 呼吸が荒くなり、異常によだれを垂らし、暴れ回りながら痙攣を起こす。 その姿は、異常な発作を起こしたベティとアビゲイルと、同じ症状だったのだ。 これを見ていた人々は、口々に叫びはじめる。 「やっぱり、魔女の仕業だ! 魔女の呪いだ!」 星読み先生とメイドも、この信じ難い事実に、言葉を失った。 疑心暗鬼だったサミュエル氏も、この事実を見て、娘たちに起こっている原因は、悪魔・魔女らの仕業であると確信していく。 そこでサミュエル氏は、近隣に住む同じ牧師のジョン・ヘイル氏を招いた。 ジョン・ヘイル牧師は、白髪頭に真っ黒な衣装を着ている。 サミュエル氏とジョン・ヘイル氏は、村の教会に、ベティとアビゲイルを連れていく。 立会人として、星読み先生とメイドが同席した。 教会の中央に、大きな魔法陣を描き、その周りをたくさんのロウソクで囲む。 ジョン・ヘイルが一本の剣を天高く掲げて叫んだ。 「今から、悪魔祓いの儀式を行なう‼︎」 魔法陣の中央に座らせられたベティとアビゲイルは、牙を剥くように周囲を威嚇し、手足をバタつかせて異常な動きをしている。 やがて、祭壇の前に立ったサミュエル氏とジョン・ヘイル氏は、何やら呪文のようなものを唱えはじめた。 その緊張感と、異様な威圧の空気は教会中に広がっていく。 教会の隅で、星読み先生とメイドは、その様子を見守っていた。 そして轟くような呪文の声がピークへと上り詰めた時、二人の大きな声が辺りを一喝する。 「魔女よ‼︎ この場から立ち去れぃ‼︎」 そこでジョン・ヘイル氏が、小声でサミュエル氏に促した。 「さ、今だ。二人に聖水を。」 あらかじめ聖水を持っていたサミュエル氏が、その合図とともに子供たちの傍へと駆け寄り、その聖水を振りかけていく。 ジョン・ヘイル氏は持っていた剣を、宙で切るような動作をして、平静へと戻った。 荒れ狂うような儀式は、パッタリと静まり返り、終了をむかえる。 息を呑んで、静かに一部始終を見守る星読み先生とメイド。 儀式を終えたサミュエル氏とジョン・ヘイル氏は、魔法陣の中央の子供たちの様子を窺った。 ベティとアビゲイルは、これまで同様、体をバタつかせたり、鋭い顔で二人を睨み返している。 「・・・ダメだ。失敗だ。」 落胆した声で、そう呟いたのは、ジョン・ヘイル氏であった。
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