ケース7️⃣ 前世追憶

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対するもう一人の大人は、50歳代ぐらいの女性で、会話をしながら時折、隣の椅子に座らせている自分の娘を気にかけている。 娘は5歳ぐらいの女児で、着込んできた分厚い衣服の上から、更に母親の物と思われる防寒着に身を絡んでいた。 程なく会話のやり取りを続けてきた末に、50歳代の母親の方が伝える。 「星読《ほしよ》み先生。今日は本当に、ありがとうございました。」 それに対して30歳代の女性も、優しい笑顔を浮かべて答えた。 「いいえ。私で良ければ、またいつでも力になりますから。」 母親はまた、チラリと娘に目をやりながら、話しを返す。 「本当にお陰様で、この子の『前世』っていうものを知る事が出来ました。ありがとうございます。」 「お子さんは、きっと『前世』からの使命に気がつき、そして今後の人生に、生まれてきた意味を見つけられる事を信じてあげてください。」 星読み先生と言われた女性が、そう告げると、母親はまた何度も頭を下げて、代金を支払った。 その後、吹雪こそないものの、再びひんやりと冷え切り静まり返ったような外へと、母親と娘は出て行く。 「ありがとうございました。」 その言葉を最後に、親子は寒冷の中を立ち去っていく。 星読み先生は親子を見送った後、家の中に戻った。 それから、しばらくした後、慌ただしく沈黙を破って、誰かが家の中に入ってくる。 星読み先生は別段驚いた様子もなく、振り返りはしたものの、物音だけでその主が誰なのか判断出来た様子で言った。 「メイド。おかえりなさい。買い物、少し遅かったですね。」 メイドと言われた人物は、20歳代後半ぐらいの女性で、頭から灰色の頭巾を被っている。 その顔は、くすんだ肌で丸顔、小柄ではあるが小太りな体型だった。 メイドは、どうやら急いで帰ってきたらしく、返答も出来ない程、息を荒くしている。 「焦らなくていいですよ。落ち着いてから、話してください。」 そんなメイドの事を気遣って、星読み先生は、温かい態度と笑顔で伝えた。 メイドは、とりあえずキッチンの方へ買い物の品を置くと、ようやく呼吸を落ち着ける事が出来、声を発する事が叶う。 「・・ハァ、ハァ。あ、・・あのう、星読み先生。お客さんは?」 「あ、先程、帰りました。」 星読み先生がそう話すと、メイドは申し訳なさそうな表情になって、頭を下げた。 「星読み先生。すいません。お客さんに出す飲み物を、買いに行ったのに・・間に合いませんでした。」 「まあ、仕方ないですよ。次の時に、飲み物を出してあげれば良いですから。」 星読み先生は、穏やかに答える。
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