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メイドは申し訳なさそうにしながらも、星読み先生のその表情に救われた様子で、話しかけた。
「星読み先生。今日も、前世や運勢を見てあげたりしたんですか?」
「そうですよ。私は天文学や占星術を学び、幼き頃より人の前世を見通す力を頂いてますので。人のお役に立つのならば、いつでも。」
星読み先生は、笑顔で答える。
その時、また誰かが訪ねてきた。
「すいませ〜ん。」
応対すると、現れたのは全身を防寒着で包んだ中年男性で、重そうな荷物を幾つも背負っている。
「食糧や生活品などを販売しておりますが、いかがですか?」
どうやら、行商人のようだ。
そう言われて、星読み先生とメイドは、荷物を下ろし中身を見せる、中年男性の所に歩み寄った。
腰を下ろして、さっそく品定めをするメイド。
「おお〜、これは珍しいわねぇ。」
そんな時、行商人が何気なく話す。
「いや〜先程、セイラムの村に行ってきたんだが。何か大変な事が起こっていたよ。」
その言葉に反応し、星読み先生は聞き返した。
「大変な事?」
「ああ。何か子供が二人、変な発作のような病気を発症したみたいで。可哀想に。大した事なければ良いが。」
星読み先生の表情が、険しいモノに変わる。
行商人と一緒に、商品を見ているメイド。
黙っていた星読み先生が、突然声をあげる。
「メイド! すぐに支度して! 行くよ!」
不意に言われたメイドは、何の事かと理解出来ない顔で尋ねた。
「え? 星読み先生。行くって、どこへ?」
遠くへ視線を向けた表情で、星読み先生が答える。
「セイラムの村へ!」
「え⁈ え〜⁈ セイラムへ? 今からですか?」
突然の事に戸惑うメイド。
星読み先生は、堂々とした口調で告げた。
「今からよ! 馬で行けば、1時間程で行ける!」
「はぁ・・。まあ、そうですが。」
そう言いながら、メイドは渋々立ち上がる。
聞いていた行商人も、広げていた商品を片付けはじめた。
メイドはバタバタと慌てて、準備に取り掛かる。
「やっぱり、かなり寒いでしょうねぇ。」
支度をしながら、メイドが言った。
星読み先生は、体を包み込むような大きな防寒着のローブを着込みながら答える。
「寒いけど、この辺の地方は、大雪は降らない。だから、道中は問題なく行けるはずよ。」
メイドは星読み先生の、セイラムへ行く揺るぎない決心を確認し、仕方ないといった風な諦め顔をした。
二人は、家の裏の納屋に繋いであった2頭の馬へと跨《またが》る。
冷たい風が、まるで二人の行手を遮っているかのようだった。
やがて、星読み先生とメイドは、まだ日が明るいうちに、セイラムの村に到着する。
ここは、セイラム港から内陸へ数km 入った小さな集落。
1672年に、セイラム村として独立したのだ。
レンガ調の家が立ち並んだ村は、どこか物静かで、行き交う村人も愛想がなく、二人をよそ者の目で見返した。
そんな嫌悪な雰囲気を感じながら、二人はまず村の宿屋を探す。
村の一画に宿屋を見つけ、馬を降りて入っていった。
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