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「う〜ん。おそらく、『前世』の何か繋がりが関係しているのかも・・しれないね。」
それを聞きながら、美咲は嬉しそうな顔をする。
更に、鬼切店長が確信に迫った話しを投げかけた。
「もしかしたら、・・・俺と美咲くんの『前世』は・・。」
そこまで言った時、いきなり美咲が外を見ながら大きな声で言う。
「あ〜、鬼切店長! 私の家、そこです〜!」
そう言われて、鬼切店長は車を停めた。
「本当、良かった〜! 車で送ってもらえて〜! 鬼切店長、助かりました〜! ありがとうございま〜す!」
相変わらず美咲は、賑やかにお礼を言う。
外はまだ、雨が降り続いていた。
「私、このまま走っていけば、玄関に辿り着きますから、大丈夫です!」
快活な美咲の声に、鬼切店長も笑みを浮かべる。
「そうか。気をつけて。今日もバイト、お疲れ様。」
穏やかな鬼切店長の言葉を聞いて、美咲は車を降り、家の入口へと走っていった。
その美咲の後ろ姿を見送りながら、鬼切店長は一人、ある思いに呟く。
「もしかして・・。俺と美咲くんは、『前世』で、親子だったのだろうか。あの子と話していると、どこか懐かしい感じがする。」
ほとんど人通りのない雨の夜に、鬼切店長は車を停めたまま、物思いにふけるのだった。
雨は、この町に、・・そして、鬼切店長の心の隅に降り注ぎ、言い知れぬ感情を濡らしていくのである。
4月の晴れた日の午後。
タコ焼きハウス・エリーゼ。
店先に3人の女子高生が来ていた。
「え〜⁈ 本当に、ですか?」
驚く声が響く。
「そうなのよ。ごめんなさいね。占いのほうは、もう辞めたの。これからは、タコ焼きだけを買いに来てね〜。」
叶恵は、そう言って謝りながら、相変わらず愛想良く振る舞っていた。
「え? 何で、占い辞めたんですか?」
女子高生の一人が尋ねる。
「特に理由はないんだけど。まあ元々、占いのほうはお金を貰わずにやっていた事だし。仕事というより、趣味というか。だから、そろそろ辞めて、タコ焼き一本でいこうかな〜って。」
叶恵は笑顔のまま、淡々と話した。
「残念〜。占い、楽しみにしていたのに。」
女子高生は、最後まで占いを希望していたが、叶恵の話を聞いて、仕方なくタコ焼きだけ購入し去っていく。
店内で一人残った叶恵は、苦笑いをうかべながら、一つ溜息をついた。
そして、カウンターの椅子へと腰掛ける。
叶恵は先日、メグたちと占い対決で負けたその賭けをしっかり守っていたのだ。
どうであろうと、対決して負けた事は事実であるし、約束した限りはそれを守る。
ここにきて良くも悪くも、叶恵の性分が現れていた。
叶恵自身も、好きで始めた占いである。
長らくやってきた占いが出来ない事は、どこか抜けたような気がしていた。
しかしその反面、あの対決が、占いをキッパリと辞めるキッカケを作ってくれたといってもよい。
占いを辞めて、まだ日が浅い叶恵の心は、物足りない気持ちに揺れている時期だった。
そんな物憂げな叶恵の側へと、人影が近づいてきた事に気付く。
客だと思った叶恵は、すぐに椅子から立ち上がり、その人物に挨拶をした。
「いらっしゃ・・・⁈」
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