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「今から、サミュエルさんの家に行くわよ。」
そう言いながら、星読み先生はもう、部屋から出ていこうとしていた。
「え〜! あ〜、待ってくださいよ〜。」
急いで、後に続くメイド。
この村に来た時から感じていた、疎外感。二人がよそ者という事も関連しているようだが、元々この村の人同士も交流が少ないようだ。
夕暮れ時、外を歩く人は少ない。宿屋の主人に、サミュエル氏の自宅を聞いた二人は、そこを目指して歩いていった。
道中、家の窓から顔を出していた村人と目が合ったが、冷たい視線で窓を閉められた。
さらに、庭先に立っていた人とも出会ったが、二人を見かけると、関わりあいたくないような雰囲気で家の中へと入ってしまう。
どこか異様な空気が漂う村なのだ。
程なくして二人は、教えてもらったサミュエル氏の家へと辿り着く。
入口のドアをノックする、星読み先生。
すると、
「誰だ?」
と、少し迷惑そうな様子で、一人の中年男性が出てきた。
男性は中肉中背の体格に、上下とも黒い正装の格好をしている。髪も整えられ、面長な顔立ちは、紳士的な印象を受けた。
星読み先生は、その男性の顔を見て、面識がある事を確認し尋ねる。
「こんばんは。お久しぶりです、サミュエルさん。」
訪ねてきた人物にそう言われて、改めて顔を確認した男性の表情が、笑顔に変わった。
「おお! あなたは、星読み先生! どうして、ここに⁈ ・・あ、まあ、どうぞ中へ。」
二人はすぐに、家の中へと通される。
サミュエル・パリス。39歳。
暖炉のある落ち着いた雰囲気の室内は、安堵を与えてくれた。
ふと気がつくと、既に先客があっていたようで、その男性は椅子に腰かけ、星読み先生たちに軽く会釈《えしゃく》する。
「サミュエルさん。突然にすいません。お客様が来られていたんですね。」
星読み先生が、申し訳なく言った。
「ん。あ、まあ。気になさらずに。星読み先生も、せっかく来られたんですから。」
サミュエル氏は、少し曇った表情をしながら言う。
「あのう。突然、お伺いしたのは、二人の子供が発作を起こしたと、人から聞いたものですから。」
星読み先生は、事情を説明した。
サミュエル氏はそれを聞いて、先客の男性と一旦目を合わせたが、心苦しそうに話しはじめる。
「あ、いや実は・・。その発作を起こしたというのが私の娘でして・・・。」
「そうでしたか・・。お気の毒に。その後、娘さんの様子は、いかがですか?」
星読み先生が尋ねると、サミュエル氏は隣にある子供部屋へと案内してくれた。
およそ10畳程の部屋にベッドが二つ並べてあり、そこに子供たちが休んでいる。
見たところ、特に異常な様子はなく、二人とも寝息をたてて眠っているようだった。
金髪で色白の、可愛らしい女の子たちである。
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