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俺たちはまだ社会人1年目。今、穂乃果が名字を変えるのは手続きが面倒だろう。名字が変わってしまうからと学生結婚する人たちもいるくらい面倒らしいし。だから、本当ならプロポーズはもっと後のつもりだった。だけど、俺がこうも急いだのには理由がある。
「神木君、ドイツに行ってみないかい?今度、ドイツに支社を作ることになってね。もちろん、今すぐにという訳ではないが1か月以内に返事をもらえるかな?」
と部長直々に声をかけられたのだ。
別に、穂乃果が浮気をするとは思っていない。だけど、遠距離それも、国も違うとなると会う頻度が落ちてしまうし、電話なども時差があるからどちらかが睡眠時間を削るみたいになってしまう。だから、とりあえず籍は入れておきたかったのだ。それに、ドイツに行くのはまだ半年ほど先の事らしいし。
「あー、それでな、穂乃果。この紙に名前を書いてくれないか?」
「……連夜。相変わらず、手を回すのが早いね。」
俺が穂乃果に渡したのは婚姻届だ。しかも穂乃果が書くべきところ以外はすべて埋まっている。
「嫌だったか?」
「別に。ただ、私がプロポーズを受ける前提だったことがなんか気に食わない。」
「何なんだよ、それ。」
穂乃果は文句を言いつつも自分が書くべきところを丁寧に書いてくれている。そして、穂乃果が書き終わったらいつ、提出するかを二人で決めた。
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