鍋用闇

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 ――んで。やってきました、■■県■■■市!  ふー……。  写真の洞窟って、ここだよな。 【鍋用闇】の空袋……は。あ、よかった。ちゃんと忘れず持ってきてた。  袋の裏の写真と、洞窟の入口の景色を見比べて……っと。  よし、よし。間違いないだろ、これ。  おー。ここが、いつも食べてた闇鍋の、原料の闇が採れる場所かー。  なんか、感慨深い……。  しっかし、ほんとに山奥だねー。交通の便が悪いったら。  こっから日帰り、できるかな。  まあ、野宿も想定していろいろ持ってきたし、いざとなったら……。  ん。そんじゃ、行きますか!  洞窟の中へ、ゴー!  ………………。  ……うっひゃー。  中、ほんと真っ暗じゃん。こわー。  ライトつけたい……けど。闇を採るのに明かりはやっぱ、ご法度だよな。うう……。  けど、さっすが食用の闇の採取場。見るからに良質な闇だらけ。  なんかこう、ふだんそこらへんで見かける闇より、ずっとなめらかで、濃厚で、舌触りがよさそうで……。  ああーっ。もうっ、見てるだけで食欲わいてくる闇って感じー!  よし、それじゃ、そろそろ。  闇採り、始めますか。  正直、闇の採り方ってちゃんとは知らないんだけど……。  とりあえず、【鍋用闇】の空袋、きれいに洗って持ってきたから……この袋に闇を詰めれば大丈夫、かな?  …………。  袋、あっという間にいっぱいになっちゃった。そりゃそうか、ストレートつゆ3~4人前の袋だもんな。鍋一回分の闇入れるので精いっぱい、か。  ……腹へったなあ。  ……せっかくだから、ちょっと。  採れたての闇、この場で味見してみますかね。  空袋の中に入れといたビーフジャーキーに、そろそろ闇が染みた頃合いかと思いますし。  ……ふふふ。  ――んーっ。  うまっ! やっぱ、採れたての闇は違うなあー。  これだけ新鮮だと、闇自体には味つけいらないね。  むしろこの素朴さが、闇本来の風味を味わってるって感じで……うん。  ……うん……うん。  ……あ。  おーい!  みんなも食う? さっと闇に漬けたジャーキー!  ……おーい!  ……おーい?  ……おーい、ってば!  ちょっと! みんなー? どこいったー?  ……あれ。  ……うそ。ほんとに、はぐれちゃった? やばっ……。  ど、どーしよう……。  みんなのこと、さがしに行かなきゃ。  ――って。  ……あれ?  …………?  なんか……立てないぞ?  っていうか……え?  ……俺、いつ座ったんだ?  ……あ?  ちょっと待て。ちょっと待て。  なんで、こんな真っ暗なの?  ここどこ?  ……あ。……ああ、そっか。洞窟か。  そうだよな。  だって、真っ暗な洞窟の奥でないと、闇は採れないわけだし。  だから、【鍋用闇】のメーカーはここで。  ……ん?  鍋用闇?  あれ? そんな商品、ほんとにあったっけ?
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